【コラム】創業以来、初めて朝礼を導入したら!

 

 

 

 

 

 

朝礼導入前の会社の風土

栃木県南部にある従業員130名の製造業。
創業70年の老舗企業である。
しかも社名を聞けば誰でも分かる有名な会社だ。
そんなS社は、創業70年経った現在まで朝礼を一切やったことがなかったのだそうである。
そういった社風のせいなのかはわからないが、S社では様々な現象がこれまで度々起こってきたのである。

その一例が離職である。

「優秀な社員ほど、ドンドン退職していってしまう」と、特に製造部の社員たちの離職を嘆く声が聞こえていた。

辞めていってしまう社員の主な共通要素は、国立大学の工学部出身や東京都内の有名な工業系大学の者であった。

またもう一つの特徴が、会社に対してよく改善提案や、大小設備投資などに関した予算立ての要望を出していた若者たちだったのだ。これは会社始まって以来、経営陣たちが不可思議な謎として、アンタッチャブルな内容として触れることがほとんどなかったのである。

きっと退職していってしまった者たちは、待遇がいい大企業志向だったり、自己主張が強く反発心が大きかったりするためだろう。

こんなふうに考える者が多かったのだ・・・。

 

創業はじまって以来の初朝礼

このS社に弊社がコンサルタントとして関わったのが、今から3年前である。

はじめは管理職の研修を実施して、社内のマネジメント力向上と次世代の経営幹部づくりを目的として会社の改善を図ろうとしたのだった。

そんな折、弊社の営業担当がS社の社長(61才)と会話をしていた時、ふと朝礼の話題になったのだ。

営業担当曰く、「御社では、朝礼はいつもどんな風にやっているんですか?」

S社社長曰く、「朝礼か・・・、やろうかと思った時期もあるけど、結局やってないんだよ。」

営業担当、「一体いつからやらなくなってしまったんですか?」

S社社長、「いつって、ずっとだよ!会社始まってからやったことないんだよ。」

このような取りの末、コンサルタントより朝礼の実施をご提案し、結局毎週月曜日の8時から朝礼をやることになったのである。

朝礼は、各部署に分かれて実施し、その週の主な予定と情報共有事項を各担当者がアナウンスした後、最後に部長が3分間スピーチで締めるという流れであった。

するととんでもないことが起きたのだった。

58才の製造部長が、突然社長に退職を申し出てきたのだった。

話を聞くと、製造部長曰く、「私は、毎週の3分間スピーチが始まって以来、ノイローゼ状態になってしまった。話す内容を考えようとすると、毎晩眠れない日々が続くようになったのだ。精神的にもう限界だ。このままでは自殺に追い込まれてしまう。私の親戚も数人、ノイローゼで自殺している。私の血統は、ノイローゼで自殺してしまうものを持っている。私もその血を引いているから、そうなってしまう前に、会社を早期退職して、命を温存したい!」とのことだった。

会社側は、製造部長を慰留したものの決意は固く、結局、部長を降格にし、技能伝承担当者として、マネジメント職を離れ、若手に技術的指導をする立場へと変更になったのだが、問題はその後起きた。

製造部長の交代に際し、次の製造部長が専用デスクの引出しを開けたところ、何とこれまでに会社に提案や意見要望を積極的に出し、退職してしまっていた元社員たちのその提案書・要望書などが山ほど出てきたのである。

つまり、これまで積極的に会社のためを思って意見を言ってきた社員たちの提案書・要望書は、前製造部長のところで全て止められ、一切会社の経営陣には届いていなかったのである。

前製造部長が就任していた12年間。

この止まった時は、帰ってこない。意を決して改善提案をしてきた離職していった社員の顔が浮かんで来たという。もちろん、退職していってしまった優秀な社員たちも帰ってはこない。

 

現在のコミュニケーション向上

現在は、社内の風通しを良くしようということで、「情報の見える化」と「間髪入れない報連相」の2つをメインテーマに実践している。

そして毎週月曜日の朝礼時には、部門での全体朝礼の連絡事項の後に、各部署に分かれての朝礼をするようになっている。

そして、スピーチは部長だけでなく主任までの役職者が交代で、毎週行うようになった。

その結果、役職者たちは、人前で話すことが上手になったばかりか、その産物として職場での発信力や主体的なリーダーシップが上手に取れるようになってきている。

また、日常の業務内における「報連相」も円滑に行われるようになってきている。

更に、風通しのいい組織を目指し、管理職たちは、「部下から話しかけられやすい風土づくり」を目的として、外部講師を招いてロールプレイング型の研修会を毎月行っている。

S社は、現状に甘んぜず、従業員満足度が高く、結果として顧客満足度の高さに繋がる組織を目指し、日々の業務が最高の研修の場として、活気にあふれた取り組みを楽しみながら送っている。


株式会社エルシーアール 専務取締役 荒井 浩通