【コラム】パレートの法則
パレートの法則とは
イタリアの経済学者で、ヴィルフレド・パレートが発見した統計上から見出した法則を意味します。代表的な考え方として、経済の世界では全体の総数量の多くを、その全体を構成している一部の項目が占めているという理論です。別名80:20の法則とも呼ばれています。
例えば、以下のようなテーマがパレートの法則として取り上げられることが多いです。
•自社の総売上げの8割は、全体の上位2割の顧客で占められている
•自社の総売上げの8割は、自社の上位2割の製品・サービスによって占められている
•Amazonのようなネット通販でも、上位2割のヘビーユーザーが全体の売上の8割を占めている(但し、ネットの場合、少額購入者がとても多くロングテール現象といわれている)
•Webサイトをキーワードで検索すると、上位2割のページに全体のサイトアクセス総数の8割が集中してアクセスする
•一つのアプリケーションを利用する際、作業の8割が全体の2割の機能で間に合っている
•製造業における不良品の総数の8割は、上位2割の種類の不良要因によって占められている
•顧客クレーム総数の8割は、上位2割の種類のクレームによって構成されている
ざっと上げるとこんな感じがパレートの法則として取り上げられていることが多いですね。
実際に遭遇した事例
①廃棄物処理会社の例
営業戦略の構築コンサルティングで関わった廃棄物処理会社の場合、過去5年間の全ての取引先を洗い出しました。
そして顧客別の単年度の売上高を入力し、かつ5カ年の累計売上高を算出したところ、驚くべき結果が現れたのです。何とその企業の場合、上位20%の顧客によって、全体の売上高の93%も占めていたのです。
何となくパレートの法則に則った結果は、皆想定していましたが、これほどまでに上位の顧客が多くの売上を占めているとは、誰も予想していませんでした。
②建設資材卸会社の事例
ルートセールスが主体の企業でしたので、現状の客観的な分析ということで、上記同様、過去5年間の顧客別の売上高や、商品別の売上高を算出してみました。
やはり上記同様に、結果は明らかに出ました。この企業の場合、上位20%の顧客が占める全体の売り上げ割合は、77%でした。ここ最近、新規開拓の営業も積極的に進めていたこともあり、80%を下回る結果となったものと推測しています。
また新たに発見した点ですが、上位20%の企業に共通して見ら有れる事業内容の特徴や、プロファイリングを見てみました。すると上位21~40%の顧客層の中に、上位20%の企業と共通して見られる点があるにも関わらず、あまり売り上げていない企業が多々あったのです。詳細を現場で確認すると、営業担当者の思い込みで、積極的な提案型営業は行っておらず、日々、お客様に言われたことにだけ対応する御用聞き営業を行っていたことが判明したのです。
勿論その後は、上位20%の顧客と同様の要素を持つ企業に対しては、積極的な営業を展開していったことはいうまでもありません。
③農業機械製造業の例
ある農業機械製造業の場合、品質管理のシステムが出来ておらず、製品の不良件数がとても多いという悩みを持っていました。
この不良品の実態を3ヶ月間、集計してみました。すると不良品の数もさることながら、極めて多かったのが人為的な単純ミスだったのです。しかもその単純ミスが、全体の不良品の上位を占めており、不良品の種類の上位20%が、全体件数の82%を占めていたのです。
結論として、この会社の場合、上位20%の不良品の原因を撲滅すれば、全体の不良品の総数が大きく減少するだろうとの仮説から、品質改善のプロジェクトをスタートさせました。
結果、半年後には、作業工程に1か所だけ確認ポイントを設けることで、不良品の総数を大きく撲滅させることができたのです。
以上の事例のように、思い込みを捨てて、これまでの実績データを客観的に分析することで、新たな解決策や、戦略を見出すことが可能となるのです。
株式会社エルシーアール 専務取締役 荒井 浩通