専門技術教育だけでは足りません ~カッツモデルに学ぶ~
専門技術教育は実施していますが・・・
「納入メーカーさんから最新機器の使い方は定期的に教わっていますよ」「うちの会社は専門技術の教育にかなり力を入れていますよ」
企業の経営層の方とお話をさせていただくと、このようなお声をよくいただきます。もちろん間違ってはいません。自社のコアコンピタンスを育て、他社に対する競争力をつける手段として専門技術教育は重要です。
そのようなお声に対し、私は「それ(専門教育)だけでは十分ではないですよ」とアドバイスをすることにしています。なぜなら人が組織で仕事を行うにあたっては「専門スキル」だけでは成果を出し続けることは難しいからです。
カッツモデルとは
この理由について、著名な「カッツモデル」を用いて説明します。
カッツモデルとは米国の経営学者・ロバート・L・カッツが提唱した「マネジメント階層(※)に応じた必要なスキル」のことで、組織で成果を出し続けるためには3つのスキルが必要だとされています。
カッツモデル 3つのスキル
CS(コンセプチュアルスキル・・・複雑な問題の本質を捉えるスキルのこと。様々な問題を解決するために必要なスキルとも言える)
HS(ヒューマンスキル・・・他者との関係性に関するスキルのこと。組織は一人で動かすのではなく、他者との関係性維持のなかで自分の役割を発揮するスキルとも言える)
TS(テクニカルスキル・・・業務を行う上で必要な技術的な専門能力のこと。業界知識や機器の操作技術などがこれに該当します。)
スキルのバランスが大切
カッツモデルでは、マネジメント階層と3つのスキルの持つべきバランスは異なることを謳っています(図1)。
経営層に求められるのは専門スキル(TS)に加えて問題解決力(CS)はそれ以上に求められます。係長・主任には専門スキル(TS)の発揮を期待するけれども、問題解決力(CS)も少しは求められることを意味します。またヒューマンスキル(HS)は全ての階層に求められる重要なスキルであることを意味しています。(皆さんの会社にもいらっしゃいませんか? 専門性は高いのに、他者とのコミュニケーションが不得手で周囲の協力が得られず、結果として成果を出せない人。20代の私も、そうだったかもしれません。)
つまり組織で成果を出すためには、「専門技術力(TS)だけでは足らない」と解釈できます。
冒頭の経営者に対する私からのアドバイスは「コンセプチュアルスキル(CS)、ヒューマンスキル(HS)も付けさせないとだめです。つまり“バランスの取れた人材”が必要です」とのメッセージでもあります。
教育に力を入れる企業は強い
多くの企業は残念ながらCS、HS以外の習得にお金と時間をかけていません。優先順位は低い傾向があります。でもCS、HSの教育に継続的に取り組んでいる企業は、会社の業績だけでなく、社員さんの人間力も高いことを、私たちエルシーアールは人材育成の場面を通して肌で強く感じています。
エルシーアールは、どんな業種にも共通したCS(問題解決力やロジカルシンキングなど)やHS(リーダーシップ、部下育成、組織コミュニケーションなど)の指導・育成を得意としています。「バランスのとれた人材」を育成したいとお考えの経営者や人材育成ご担当者様は、ぜひご相談ください。
補足:マネジメント階層
カッツモデルでは以下の3つの階層で分けて説明されます
・トップマネジメント・・・経営層(戦略や方向性の決定)
・ミドルマネジメント・・・部長や課長クラス(戦略の実行)
・ロワーマネジメント・・・係長や主任クラス(現場の管理・指導)
カッツモデルは日本では一般社員にも応用することもあり、一般社員をロワーマネジメント層に入れる考えもあります。

株式会社エルシーアール 取締役 事業推進部長 若色宏幸