【コラム】成長戦略のM&A
M&Aにおける歴史の変遷
1989年、バブル経済で日本が絶頂の時期、ソニーがコロンビアピクチャーを買収し、三菱地所がロックフェラーセンターを買収し、日本は世界から強いもの勝ちのM&Aとして大変な脚光を浴びました。
しかし1991年には、そのバブルが崩壊し、多くの企業が倒産、また買収対象になりました。
この頃、M&Aで買い手となるのは、大企業が中心で、M&Aは中小企業には縁遠いモノ。
どこか別世界というイメージが強かったと思います。
ちょうどその時期には、ハゲ鷹ファンドなる組織が半ば強硬な手段を用いて、多くの企業を買いあさり、社会的に批判を浴びる報道も多くなされるようになりました。
2005年には、ホリエモンに代表されるライブドア問題があり、ますます、M&Aに対するイメージはダークなものになりましたが、ここ近年では中堅・中小企業でも大分行われるようになり、M&Aが世の中に随分と浸透していったのでした。
取り巻く環境の変化
加えて、財務内容の悪化から、いわゆる再生型M&Aといわれるものも多く見られるようにもなってきました。
2011年には、東日本大震災が日本経済に襲い掛かります。この頃からは、M&Aは、経営戦略に活用するという考え方が浸透し始め、多くの業界にて、同業者の経営統合など、業界再編型のM&Aが増加していきました。
その後も業界再編は、人口減少が加速する日本ではどんどん進み、2020年の東京オリンピックという輝かしい未来に向けて、組み合わせの相乗効果発揮によるM&Aが増加していきます。
しかし、2020年の幕開けと共に、コロナ禍により資金不足や将来的市場性の悲観的展望の会社が、M&Aを自社の生き残り戦略として活用し始めました。
今後も世界の経済情勢や人口動態などの動きから、様々な形のM&Aが加速していくものと考えられています。
成長戦略としてのM&A
今後、M&Aを自社の成長戦略として考慮する場合、会社を買収するだけではなく、積極的に譲渡することで、大きな成長をとげる事例も数多く出ています。
実際、M&Aに関しての活用を中小企業庁が調査してみると、経営者の半数程度が何らかの関心を持っているという結果が出ているようです。
特に、「積極的に取り組んでいきたい」や「良い効果性が見出せれば検討したい」と答える経営者は、3割を占めているようです。
また、買い手・売り手のどちらに関心を持っているかという点では、「買い手として関心」が67.0%。
「売り手として関心」が20.2%であり、両社を合わせて考えると、実に多くの企業がM&Aに関心を持っていることが分かります。
変わるM&A市場
また、経営者の年齢別の結果としては、40歳代以下の若い経営者ほど、今後のM&Aの活用に関心があるという報告が出ています。そして若い経営者ほど、「買い手としてのM&Aに関心がある」という傾向が強いのも大きな特徴の一つといえます。
逆に経営者年齢が高いほど「売り手としてのM&Aに関心がある」と回答する割合が高い傾向が見て取れます。
弊社が20年以上提携をしている日本M&Aセンターの2015年の事例にもありますが、40代の若い経営者が、自社の今後の永続的発展性を考慮して、積極的に会社を譲渡し、販路拡大や採用の強化に多大な好影響を与えている事例も多く出てきています。
・譲渡側:有限会社森田工産(43才から譲渡を検討)
・譲受側:株式会社エスイー(東証ジャスダック3423))
https://www.nihon-ma.co.jp/page/interview/moritakohsan/
株式会社エルシーアール 専務取締役 荒井 浩通