【コラム】ストロークを活用しよう

 

 

 

 

 

 

 

心理におけるストロークとは?

皆さんはストロークと聞くとどんなことを思い浮かべるでしょうか。スポーツの世界ではよく聴きますね。例えば、テニス・ゴルフなどでは、1打や一振りのことを表します。水泳では、腕の一かき、ボートなどでは櫂の一かき、鳥の翼の一羽ばたきを表します。
実は、コミュニケーションの世界でもこのストロークという言葉があります。心理学用語では「他者に対する自分の表現」という意味だそうです。加えて、臨床心理療法の交流分析では、基本理論ともなっているようです。

4つのストローク

ストロークは全部で4つに分類されます。人間が行う行動など、対象となる事柄があるものに対して行うものと、その人自身の存在や人格に対して行われるものとの2つに分類されます。さらにこの2分類したものを、プラスのストローク、マイナスのストロークに分けることができます。
「プラスのストローク」とは、感謝する、褒める、労う、認めるなど、「自分はこれでいいのだ」という元気な気持ちがもてるストロークのことを言います。
一方、「マイナスのストローク」とは、相手に対して、責める、文句を言う、非難するなど「自分はだめなのだ」と思わせてしまうストロークのことを言います。
このように考えてみると、日常の生活の中で、毎日多くのストロークのやり取りが、プラスあり、マイナスありで、交わされていることが分かりますね。

ストロークがもたらす影響の大きさ

数年前のことですが、テレビ番組を見ていて、「タッチセラピー」というものを紹介していました。保育器の中で育っている赤ちゃんに、毎日何度かその親が手のひらで撫でて育てた場合と、そういった接触行為はなく、毎日親がただじっと眺めるだけの行為を繰り返した場合とを比較したイギリスの大学で行った実験でした。
結果は明確に違いとして現れました。複数の赤ちゃんの統計データを取ってみると、明らかに毎日手のひらで撫でる行為を繰り返した方が、体重の増加率が非常にいいという結果が出たのです。
皆さんもお気づきだと思いますが、この「手のひら」で触るという行為は、赤ちゃんという存在に対するプラスのストロークにあたります。

人の一生を左右するマイナスのストローク

一方、マイナスのストロークも大きな影響を与えます。その最たるものが児童虐待です。
虐待を受けた子どもは、他の一般的な同年代の子どもたちと比較して、明らかに体重が低く育っているというデータが出ています。また、愛着障害といって、心への影響も強く与え、人と適切にコミュニケーションを取ることができなくなるとも言われています。いかに存在に対するマイナスのストロークが、人間を不幸にしてしまうかがよく分かるかと思います。

ストロークは使いよう

ただ、マイナスのストロークがすべて悪いモノかというと、決してそうではありません。
部下が間違った行為をしてしまったら、叱るなど、対象となる事柄がある(条件付き)のマイナスのストロークが時には必要な場合もあります。
皆さんも、子どものころ何か悪いことをしてしまったとき、学校の先生などに叱られた経験があると思います。その際、不思議なことに、叱られたにもかかわらず、なんか気持ちがスッキリした、なんていう気持ちになったことがありませんか。きちんと叱られることで、自分の心にけじめをつけられたのです。これがもし、叱られずにいると心がもやもやしたままになって、尾を引きずってしまうのです。時にはマイナスのストロークも必要なのです。

あいさつはプラスのストロークの最たるもの

コミュニケーションに関する研修で「一日のコミュニケーションが円滑に回すために必要なこととは?」と受講者たちに問いかけると、製造業、建設業、サービス業を問わず、共通して実行されていることがあります。
それは朝一番であいさつを職場内にきちんとすることだそうです。さらに相手の目を見て挨拶をするとさらに効果的となります。これをさらにレベルアップさせ、世間話的なプラスアルファの一言を加えると、さらに組織内の雰囲気が良くなり、一日のコミュニケーションが円滑に進むそうです。
ここまでお話をして来てお分かりかと思いますが、このあいさつは、相手の存在に対するプラスのストロークです。つまりは、みなさんは知らず知らずのうちにストロークを実践していると言えるかもしれません。
ぜひ皆さん、ストロークを意識し、中でもプラスの投げかけを、対象となる事柄がある場合だけでなく、相手の存在に対する場合も、意識して実行してみてください。

株式会社エルシーアール 専務取締役 荒井 浩通