【コラム】大切な社員をこんな方法で人事評価していませんか

 

 

 

 

 

 

人事評価制度は待遇(給与、賞与、昇進昇格など)だけを決める仕組みではありません。「社員が成長することで会社も成長する」ようにプラスのスパイラルを回すことが重要です。しかし実際はそうはなっていない企業が多いようです。企業様の声として聞かれる「良くない例」をいくつか挙げてみます。

良くない例1:社員の外見・服装や言葉遣いで評価する

ある製造業様に伺った際、「能力はあっても茶髪だからD評価、言葉使いがなっていないからD評価、と評価する上司がいて困っている」。こんな経営層の方の声を聞いたことがあります。

確かに茶髪が製品に悪影響を与えたり、お客様への印象を悪くしていたりしているのなら仕方ありません。しかし業務内容的にそうではないようです。であれば、茶髪がダメな理由を社員に正しく伝え、納得してもらうことが先なのです。

良くない例2:社長が100人を評価する

創業者の強い意志と血のにじむ努力の結果、社員が100名規模まで成長しました。すべて自分がやらないと気が済まない社長のなかには、100名全員の人事評価を徹夜で行っている社長様もいらっしゃいます。でも全員の仕事の成果や取組みを本当にみられるはずはないでしょう。

だいたい人事評価の作業自体、上から順番に役員、部長、課長、係長・・・とつけていけば最後の一般社員クラスをつけるころにはヘトヘトになって雑な評価結果となっていることでしょう。そんな結果をつけられた若手社員のモチベーションは上がるはずはありません。

良くない例3:残業時間が多いと評価が高い

これはもうとっくの昔の話ですよね。今は残業時間が多い=仕事の効率が悪いという考えになっています。一方、残業が多い人は「頼られている人、成果を上げる人」である傾向は中小企業では確かにあります。

つまり残業が多いことを評価するのではなく、仕事のアウトプット(成果や業績、効率性など)そのものを評価しなければなりません。しかし社員に何を求め、どう評価すればよいかがわかっていない会社が意外と多いのも実情です。

良くない例4:上司の好き嫌い、言うことを聞く・聞かないで評価する

評価する側・される側、ともに人(ひと)である以上、感情に左右されないはずはありません。確かに「Yes」と言ってくれる部下や同じ学校を卒業した後輩に対しては、どうしても「プラスα」の評価をしたくなります。これは人事評価を行う上での「寛大化エラー」や「親近感エラー」と呼ばれる評価エラーにつながります。

企業としては感情で評価するのではなく、評価のモノサシを定め、評価者には一定の評価訓練を与える必要があるといえます。

良くない例5:上司が考課面談をしない

「忙しい」という理由で大切な部下との考課面談をおろそかにしている管理職がよく見られます。人事評価は給与や賞与、昇進昇格を決めるだけの仕組みではありません。社員の成長を促す仕組みでもあります。

社員の成長が企業の成長ですから、部下に期待する成果や行動をしっかりと伝え、部下の気持ちを聴くことのできる貴重な考課面談は最優先で行うべきでしょう。

良くない例6:本やネットで拾ってきた10項目で評価している

評価制度を20年前に取り入れたものの評価項目が例えば「まじめに業務にあたっている」「笑顔で挨拶をしている」「仕事に対し積極的だ」「部下をよく見ている」など抽象的ではないでしょうか。

「まじめに業務にあたる」とは具体的にどんな場面でどんな行動をとったか、どんな成果を出したかを明確にしないと評価する側、される側の基準が違ったままとなってしまい、部下の評価に対する納得性が低くなってしまうでしょう。

「達成する」「褒められる」「期待される」の人事評価制度

ある新聞に記事がありました。人の生きる源は「誰かに愛される」「何かを達成する」「褒められる」「期待される」であると。人事評価制度にはこのうち「愛される」を除く3つの要素を含めた制度設計と運用が重要です。

もしあなたの会社が、20年前に本やネットで拾ってきた抽象的でモノサシとは言えない評価項目で評価し、考課面談も行われずにいるとしたら、特に若い社員は逃げていくかもしれません。

一度、「社員の成長」につながる評価制度になっているか点検をしてみるとよいでしょう。

 

株式会社エルシーアール 事業推進部 部長 若色 宏幸