【コラム】マネジメントにコーチングを活かす④

 

 

 

 

 

 

 

第四回 行動を起こす


前回からコーチングというかかわり方を、単に部下の育成だけに留まらず、マネージャーのリーダーシップの向上やチーム力の強化などマネジメントに活用するという視点でのコーチングの活用について書いています。
第4回は、「行動を起こす」です。

人は誰しも今までやったことのないことをしようとする時、躊躇(ちゅうちょ)するものです。「本当にそんなことができると思ってるのか?」、「それをするのは大変だよ。」といった心の声が聞こえてきます。その声は、あなた自身の決心を試したり、無謀で危険なことから回避させるためにあなた自身を守る時もあります。でも、時として、その心の声が、必要以上にブレーキを踏んでしまい、前へ進めなくなることも多々あります。

コーチングでは、この声のことを「サボタージュ」と呼んでいます。略して「サボ」と言ったりもします。コーチがクライアントと話をしていて、よく「本当は○○をしたいのですが、仕事が忙しくて」、「そんなことをやってみると周りの人からどう思われるかが気になって」といった「サボ」の声をよく聴きます。「サボ」が話しているときのクライアントの顔は無表情だったり、声が小さくなっています。

そんな時は、コーチは「今、サボが話していますね」といった反映をしたり、「あなたは、それを本当にしたいと思っているのですか」と指摘をします。また、その人が本当にしたいと思っていることをイメージしてもらうことで、そのサボを退散させたりします。

ここまでは、1対1でのコーチングの話ですが、グループや組織でも同じことが起きています。
前回、メンバー1人ひとりのビジョンを共有し、それによって生まれる共通の“こうありたい”というところに向かっていくことを書きました。
せっかく、そうやって共有したビジョンも、日々の業務の中で、つい忘れがちになったり、ビジョンに書いたことに向かって行動はしたいのだけれど、今は目の前のことをするので精一杯で難しい、といったことが起こりがちです。

そんな時に、「自分たちのグループ・組織は本当にこのビジョンを実現したいと思っているのだろうか?」、「このビジョンを実現したら、このグループ・組織はどうなれるのだろうか?」といった問いかけをメンバーにしてみてはどうでしょうか。メンバーから「それができればいいですが、でもそんなことができる状況ではないでしょう」や「その前にこの問題を何とかしてください」といった声が出てくるでしょう。

その時、どうするか?

なぜ、そう思っているのか? まずは、しっかりとその声に耳を傾けましょう。メンバーが言いたいことを聞き取りましょう。それを愚痴だ、不満だと片付けるのではなく、メンバーが「この状態をなんとかしたい」と思っているから出てくるマグマだと捉えてみてはどうでしょうか。そういう姿勢で聴いてみてください。きっと、メンバーに変化が現れます。自分で自分を見る瞬間が生まれます。そこまで、しっかりと耳を傾けてみませんか。これが「傾聴」です。

メンバーに変化が現れたら、「この状況の中で、我々にできることはないだろうか?」と問いかけてみてください。そこから、行動が生まれます。

こうして起きた行動は、人から言われたものではなく、自ら起こしたものです。その行動を、マネージャーはサポートしてあげてください。さらに大きな行動になるでしょう。

次回も「行動を起こす」について、もう少し書いてみたいと思います。

(つづく)

              株式会社エルシーアール 人づくり講師 竹内 義博

関連コラム

マネジメントにコーチングを活かす①
マネジメントにコーチングを活かす②
マネジメントにコーチングを活かす③