Case Studies

“放牧組織”が“考える集団”へ。――中堅社員研修が起こした、静かな変革

2026.07.30 人材育成

「まるで“放牧組織”」――創造力はあるのに、成果に結びつかない

・対象企業:K社/ゴム製品製造業(社員数120名)/栃木県南地区

K社は、独自のノウハウを武器に、オリジナル商品の開発から生産までを一貫して手がける、確かな技術力を持つ企業である。しかし初めてお伺いした際、社内には少し意外な光景が広がっていた。
一人ひとりが自由に動き、アイデアは次々と生まれる。その一方で、せっかくの発想を束ねる仕組みがなく、個々の力が組織の成果として積み上がっていかない。自由を尊ぶ風土が、いつしか「管理なき自由」へと傾き、日々の業務にはムダが生まれていた。

いわば、一頭一頭は元気なのに、群れとしての向かう先が定まらない――まさに“放牧状態”ともいえる組織風土であった。
そこで当社は、社長・会長との対話を重ねるところから着手した。K社の強みである「自由な発想」は決して壊さない。その創造性を活かしきるために、必要最小限の“考える型”と管理の軸だけを通す。初年度のテーマを「自由を活かしながら、ムダをなくす」と定め、次の研修を設計・実施した。

カリキュラム内容

「ムダをなくす、ロジカルシンキング研修」/4時間×全3回
受講対象:中堅社員(係長~課長)
1.研修のはじめに(研修目的ほか)
2.ロジカルシンキングの基本
 (1)ロジック、ロジカルシンキングとは何か
 (2)演繹法と帰納法、ロジックツリーとMECE等について
3.データやフレームを活用する
 (1)データの収集と加工
 (2)フレームの活用~SWOT分析、PPM、バランススコアカード等~
4.ロジカルシンキングの応用
 (1)文章表現への応用
 (2)口頭表現への応用(PREP法)
5.グループ実習~企画提案書の作成と説明~
 (1)論理的な企画提案書を作成する
 (2)説得力のある説明をする

受講者が掴んだ“質の高い仕事”のコツ

研修を終えた受講者からは、日々の仕事にすぐ活かせるという手応えが数多く挙がった(アンケートより)。
・忙しい上司への報告は、結論から伝える――PREP法で“伝わる報告”が身についた
・問題に直面したら、まずマトリックスで整理する――フレーム思考の大切さを実感した
・ポートフォリオで自社商品の立ち位置を可視化し、進むべき方向性が見えてきた
・文書で人を動かすには、結論から筋道を立てて展開することが重要だと理解した

研修後、社内に“改善の流れ”が生まれた

K社にとっては、初めての研修導入であった。それでも中堅社員たちは、この研修を通じて「一つの目覚め」ともいえる変化を見せてくれた。
「鉄は熱いうちに打て」という。若く柔軟な中堅社員たちの吸収は驚くほど早く、学びはすぐに現場へと表れた。
・毎月の部門会議では、報告書を“分かりやすく”整えようとする動きが自然と広がった
・日常業務でも、頭の中を紙に書き出し、表に整理してフレーム思考で考える習慣が根づいた
・後輩指導の場面でも、「PREP法」「MECE」といった共通言語で育てようとする姿が見られるようになった
一人の学びが、チームの言葉となり、やがて組織の文化へと育ち始めたのである。

これからの組織ビジョン

K社の生命線は、何よりも商品開発力にある。だからこそ、これまで大切にしてきた“発想力”を今後も磨き続けながら、その発想をフレーム思考で束ね、より差別化された商品開発と、生産・販売力の強化へとつなげていく。
そして目指すのは、「個人のノウハウ」を「組織のノウハウ」へと変えること。論理的思考を組織の共通言語とすることで、人が入れ替わっても力が積み上がっていく――そんな“強い組織”への変革である。
次年度には、この学びを部下・後輩へと受け継ぐ「コーチング研修」へと発展。K社の挑戦は、着実に次のステージへと歩みを進めている。


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