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人事考課制度構築 実施事例 菓子製造業 栃木県 

 

 

 

 

 

 

『求められる役割を明確にし、頑張ったら明確に評価される』

   ~評価の物差しが認識され、継続的成長型人材をつくれ!~
栃木県 菓子製造販売業 社員数150名 / インタビュー対応者 A社長

 

がんばっても報われない不透明な組織

私どもの会社は、栃木県の県北に本拠地を構える和菓子の製造販売業を営む組織です。エルシーアールさんと出会ったきっかけは、人事考課制度の策定を始める2年前でした。たまたま営業担当の方が、私どもの会社に「電話対応力研修」のチラシを置いていってくれ、3名の女性スタッフを参加させたことが、ご縁のはじまりでした。

その後、1年くらい過ぎたころ、営業担当の方が電話でアポを取り、訪問してくれました。その時、私たちが抱える深刻な悩みを聞いてもらい、“組織として社員を評価し、頑張ったらそれに見合う賃金や賞与が与えられる流れが出来ていない”点を気づかせていただきました。

当時、我々は創業してから10年を経過する最中にあり、社長である私の強烈なワンマンプレーと5年前に苦心の末、開発に成功したある和菓子の全国的な大ヒットが相まって、右肩上がりの売上高で、急成長を遂げていました。しかし、組織力としては、成長というより“膨張”を続け、今にも膨らみ過ぎた風船が破裂する寸前という状態でした。実際、会社の売上が拡大していっても、役職がついた社員が連続してすぐに辞めてしまうという現象が起きていたのです・・・。

その社員が退職する際、彼らが口にしていた言葉は、異口同音に「自分たちは、現場でどう動いたらいいかわからない。社長からは、“上司に頼らず、自分たちで考えて行動せよ!”反対に上司からは、“お前たちは考えるな。上司の言うことを素直にやりさえすればいいんだ!”」と矛盾した方向に苦しんでいたとのことでしたさらに退職した社員たちは、何をどうがんばっていいのか分からない中、暗中模索で自分なりにがんばっているのに、自分では理由が分からないまま上司に叱責される。「もう精神的に疲れた」と吐き捨てるような言葉を残し、去って行った者もいました。今思えば、社員にとっては基準となる仕組みや制度が当時の会社にはなかったのです。

ディスカッションし自ら考えたからこその納得感

このような状態がここ数年続いていたこともあり、エルシーアールさんに任せて、人事考課制度を会社として初めてつくってみようかと思い、このプロジェクトをスタートさせたのでした。まず手掛けてもらったのは、会社側が現在、そして今後、“どんな役割を担ってほしいのかとこと、そして、組織としての成果をどうのように築き上げていくのか”ということを体系的な明文化することでした。

エルシーアールのコンサルタントの助言を基に手を付けたのが、階層別に求められる役割と、成果を出している人たちに共通して見られる特徴(コンピテンシー)についての抽出作業です。この作業には課長と部長たちに参加してもらい、階層別の特徴をみんなで議論しました。

その議論は驚きと気づきの連続でした。例えば役職ごとの役割です。社長の私からすると、部長・課長クラスの彼らなら、当たり前のように理解しているのだと思い込んでいましたが、実際のところは、それぞれの認識があり、ずいぶんずれていたことがわかったのです。ただ、やってみてこのグループディスカッション形式で進めたことは大いに意義があることだとも思いました。互いの考え方が刺激となり、気づきを生み、参加者たちに価値のある学習効果が現れたのです。

この階層別の役割の洗い出しが終わり、次にこのメンバーで対応したのは、この明文化した階層別役割を活用した評価シートの作成でした。各部署別に細かく作成するとともに、さらに管理職、中堅、一般職での階層別に分けた形で、評価シートを作っていただきました。コンサルタントの方質問形式で、我々に具体的な業務場面を思い起こさせるなかで、内容を考えていきました。

コンサルタントの質問は例えばこのような内容です。
「よい成果を出している社員の動きは、どこにポイントがあるのか?」
「逆に成果が出せない社員は、どんなポイントで動いてくれれば、しっかりとした成果を出すことができるのか?」
このような問いかけを粘り強く繰り返すことで、私たちの業務を深掘りして、我々の奥底にある真の答えを引き出していってくれたのでした。それなので、できあがった評価シートに携わったわたしたちは非常に納得感をもちました。そして、これが一つの目標として社員みんなで捉えることができ、求められる役割に向かって迷うことなく突き進むことができるようになっていったのでした。

会社側も社員側も納得・安心の減資配分型の一発回答「賞与システム」

評価シートができあがったところで、次にお願いしたのが、賞与体系の作成です。会社で決めた賞与原資を、半期ごとの評価で算出されるように反映させたシステムを考えていただきました。これは、既にエルシーアールさんが作成した賞与算出フォーマットに準じて、私たちのこれまでの賞与支給状態を十分考慮した上で構築していきました。具体的には過去5年間の部署別、そして階層別での賞与の平均額を算出することから始まりました。これは、これまで経理部門で、データを保存していましたので、難なく用意することができました。そしてこのデータを元に、半期の評価で算出された全社員の評価点数を、このフォーマットにインプットしました。すると一瞬にして、原資通りの賞与が、バッチリと算出されたのです。この後は、弊社の評価パターンに見合った同じ階層での評価点格差に応じた賞与額の差別化を、賞与係数という名称の数値を微調整させていくことで、本来の賞与バランスに合った結果を出すことができたのです。

さらに中途入社の社員や偶発的な受注をした営業社員などへの配慮を、調整給という型でその増減をうまく調整してくれるようなシステムにしていただきました。私が驚いたのは、この微調整作業を行っても、賞与の合計金額は、最初に設定した減資通りにぴったり納まったという点でした。計画的に賞与の額も経営に盛り込みたい中小企業には、ふさわしい方法であるなと感じました。

しくみが社員の成長と定着を実現する

恥ずかしながら、当社のこれまでの現状を申し上げますと、入社した社員の1年以内の退職率が6割近くありました。また、せっかく育った優秀な主任クラスの社員が退職していくという状態も続いていました。これまでは、次の等級に進む場合、“一体どんなことができれば上位の役職者として認めてもらうことが出来るのか”ということが、全く不明確な状況だったのだから社員からすると当然だったのかもしれません。

しかし現在は、半期に一度の評価結果を、賞与体系や賃金体系に反映させるだけでなく、昇進・昇格制度にも連動して展開されるシステムにすることができ、社員たちは、これまで不明確だった将来像を、社員の退職率が徐々に低くなってきたことを背景として、だいぶ明確にイメージできるようになったのではないかと感じています。これまでは、社員を採用しても直ぐに辞め、また採用を繰り返すというスパイラルが当たり前でした。しかし今は、ようやく“社員を育てる”という組織体制がスタートできたと思います。現在は、その人事考課制度の総合的なシステムをベースにして、さらに組織を強固にし、お客様からの信頼を獲得するため、FSSC22000(食品安全マネジメントシステム)にも取り組み始めることができました。
今後、成長度合いに合わせてこの人事考課制度をさらにバージョンアップしていくことが、社長である私の今の楽しみです。

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