管理職面談実施事例 産業廃棄物処理業 栃木県
管理職面談実況中継
~意外な一面が見えてくる管理職面談~
対象企業:産業廃棄物処理業(社員数80名)
受 講 者:部長、次長、課長(計12名)
管理職への面談の必要性が見えてきた
普段、経営者の前で見せている管理職の顔。
そこには真実もあるが全てではないようだ。
本質的な部分は、各自が必要に応じて、その素顔を見せている。
逆を言えば普段では隠れた部分があるとも言えるのだ。
『管理職面談』は、わずか30~40分程度であるが、経営者がつかみ取れない客観的な側面が見えてくるようだ。
今回は、実際に行った『管理職面談』の実況中継ということで、ある企業の一面をお伝えする。
普段は元気でポジティブでも未来は見えてないA次長
40代後半のA次長は、普段社内では一番元気が良く、社内のムードメーカー役を担っている。
いつも前向きな発言と、部下を元気づけるその姿が、皆の目には好印象を感じさせている。
そんなA次長に面談を試みた。
すると弊社コンサルタントが面談者として対応すると意外な一面が見えてきた。
いつもポジティブなA次長だから、きっと会社の将来像や戦略を描けているのだろうと周囲の者は考えていたのが、実際は異なるものであった。
面談を実施し、「今後、自社はどんな方向性に向かうべきか?対応が必要となってくることはどんなことか?そのためにあなたは管理職として何をなすべきか?」との質問をすると、
A次長からは、「そうですね・・・・」と沈黙が数秒続いた後、「なるようになるしかならないのではないでしょうか!とりあえず売上高を拡大するためにも社員を多く採用して、社員数を増やす必要があるんじゃないですかね。」との回答であった。
担当コンサルタントは、何とも社内の課題を客観的に捉えていないばかりか、将来像も戦略も描けていないという印象を受けたことに加え、根拠のない楽観主義者というこれまで持っていた人物像とは大きく異なる面が見えてきたのだ。
大人しいがよく会社の全体像と将来像が見えているB課長
普段は寡黙なタイプで、考えていることがなかなか見えないB課長。
社内でのパフォーマンスという点では、派手さがなく、どちらかと言えば地味に見える対応が散見される日常である。
そんなB課長に面談での質問を試みた。
A次長と同様に、面談者から「今後、自社はどんな方向性に向かうべきか?対応が必要となってくることはどんなことか?そのためにあなたは管理職として何をなすべきか?」との質問。
すると普段は控えめな性格で口数も少なめのB課長が「今、当社はコロナ禍の真っただ中にいます。その状況にあって、社員の高齢化も進んでいます。今後、組織の若返りのため、魅力的な会社になってPR出来るような採用戦略を進めると同時に、コロナによって減少した飲食店の廃棄物営業を見直し、コロナでマスク製造に追い風となっている繊維加工メーカーへの営業を強化していくべきだと考えます。しかしこれも一時的であります。そこで長期的な視点に立って、もっと利益率の高い木材系廃棄物のチップ加工に経営のシフトを切るべきだと思います。そのために我々管理職も営業的な視点を持って業務に望ませて頂きたいと感じます。」
正直、面談者も予想もしなかったB課長の鋭い戦略的視点に感嘆させられた。普段科目であるからこそ余計のその衝撃は大きいものであった。
客観的分析力は超一流、しかし本質は他責型
もう一人意外だった管理職は、普段、物事への分析力においては、ピカイチのC課長。
面談が始まると、途端に鋭い視点で、会社の置かれている状況、同業他社の動向、国の政策動向など、バンバン客観的な意見を言ってきた。
面談者もなるほどと唸るような意見ばかりであった。
続けて面談者がC課長に質問をした。
「そのような状況にあって、皆さん、そしてC課長自身はどんな点を反省し、今後どのように自分自身が取り組んでいきたいと思いますか」と他の管理職同様の言葉を交わした。
するとC課長から出た回答は、「会社の経営陣が方針を誤っていることが悪いんですよ!しかも社員たちは自ら働こうとしない奴ばかりで、私の部下もそんな者だらけです。それにいくらもがいたところで、コロナ禍の状況じゃ、うちの会社がどう転んでも、何も変わりはしないですよ!」というまるで他責だらけの意見であった。
一切自らの振り返りと戒心の点など見あたらないのである。
確かに社内では、クールで人が余りよりつかない一面があったが、きっとこんな他責型の思考が、皆との溝を深めているのだろうと面談者は感じた一場面であった。
面談の質問以外で見えてくる管理職の資質と気質
管理職面談を実施していると、各人の経営的視点や意欲などが歴然と見えてくるが、一方で、各々の性格や俯瞰力、人間としての愛情など、多面的な視点で管理職たちを観察することができる。
今回の事例では、普段の見た目とは別の側面が見えてきたものを取り上げたが、これは遠く別な例ではなく、しばしば多くの企業で見られることなのである。
また、同時に同じ組織内の管理職に対して、面談を通して観察することで、相対比較も出来るというメリットもある。
加えて数年おきに、定期的にこの管理職面談を取り入れることで、組織の成長度合いも推し測れるという活用方法もあるのである。
この産業廃棄物処理業者も、数年の後、社員の教育等を通して成長してくれていることを望む次第である。