ISO9001 スリム化実施事例 産業廃棄物業 栃木県県央
組織に合ったISO最適化=スリム化
~シンプルに捉えれば物事は最良な結果となる~
栃木県央 産業廃棄物業 社員数60名 / インタビュー対応者 環境管理責任者
立派な会社の立派なISO!?
栃木県の産業廃棄物処理業を代表する中の1社であるM社。ISO14001:2015年版への改定の相談があったのは、弊社が主催した2015版改訂セミナーの個別相談の場面であった。
この業界を代表するM社は、外部から見ると社内体制も万全で、ISOの方も十分に組織に合ったものが構築され、上手く運用もされているのかとも思えた。しかし、管理責任者から話を聞いてみると、全く逆の現象が現場で起きていたのだった。
その会社のISO14001は、遡ること2001年に県内の業界内でもトップで認証取得をした優良な会社である。業績も毎年好調で、東京商工リサーチから発表される高額所得法人一覧では、発表されなかった都市がないくらいであった。この会社の環境管理責任者は、心痛な表情で相談を話し始めた。実際は、相談というよりも悩みのどん底という感じであった。
彼曰く「うちの会社のISOの相談なんだ。審査は何とか通してもらっているんだけど、本当にこれで正しいのかどうか全く分からないんだよ。これまで10年以上の審査で、審査員の言われるままシステムをいじってきたけど、今は正直何が何だか分からなくなってきているんですよ。内容もダブリじゃないかなと思う箇所がいくつかあるし、何のためにやっているのか全く見当がつかない箇所もあるんですよ。何とかこの分かりづらいシステムを改訂したいんです。」
こんな感じの相談が、初めての顔合わせでの会話であった。
全体最適の結果が超スリム化だった
一週間後、私はM社に赴き、実際のISO14001(2004年版)を文書として見せてもらった。
その内容は以下のようなものだった。
・環境マニュアル:42ページ
・規程類:15種類(計138ページ)
・手順書:18種類(計187ページ)
・付表:36種類
・帳票類:67種類
この環境マネジメントシステムは、認証取得当事にコンサルティングを受けた東京の会社に指導を受け、これらの文書はキレイなそのコンサル会社の名前が入ったファイルにぎっしりと収納されている。一度見たらもう中身を見たくなくなるような重厚なボリューム感のシステムであった。
私は環境管理責任者にストレートに聞いてみた。
「どうですか?この文書はどの部分が役に立っていますか?そしてどの文書が無駄であると思われますか?」
環境管理責任者は、「必要に迫られてやっているだけなので、本当に必要かどうかはわかりません・・・」との反応であった。
そこで早速、ISO14001の規格を分かりやすく説明するため、ISOに普段従事していない一般社員の事務職の方にも、システム改訂のためのコンサルティングに参加してもらった。
規格要求事項の単純解釈、最低限やらなければならないこと、任意の実施事項ではあるが、実施する場合自社の環境リスクを考慮して、どれくらい取り組めばいいのかを、M社の全体最適な視点で解説していった。
規格の説明と他社でのスリム化した簡単な解釈事例を話し始めると、環境管理責任者にとっては、目から鱗の状態であった。同時に参加してくれた一般社員の事務職の方にも、コンサルの都度、理解状況や感想を聞いてみると、「大変分かりやすく、私たちがやらなければならないことと、実行するとメリットがあることが何であるかが分かり、難しいと持っていたISOにとても興味が持てた。」との感想であった。
結果的に、全体最適の結果が超スリム化へとつながるのだった。
いいISOとは万人にとって分かりやすいこと
全体最適化した結果、超スリムとなったISOは、どれくらいのボリューム感になったのか。
〔改訂前〕 〔改訂前〕
・環境マニュアル:42ページ ⇒ 8ページ -80%
・規程類:15種類(計138ページ) ⇒ 0種類(環境マニュアルに全て包含)-100%
・手順書:18種類(計187ページ) ⇒ 4種類(計4ページ) -80%
・付表:36種類 ⇒ 7種類 -80%
・帳票類:67種類 ⇒ 11種類 -84%
これまで取り組んできた環境管理責任者にとっては、驚きの超スリム化となった。
一番の功績は、ISOの改定コンサルティングに参加していない社員にも、2時間程度の簡単な説明会だけで、自分たちがやるべきことと、その目的がよく理解でき、明日から早速取り組むことが出来るようになったという点である。
万人にとって分かりやすく、組織に本当に合ったISOを追求した結果、出来上がったものは、超スリムで使いやすいISO14001となったのである。
株式会社エルシーアール 専務取締役 荒井 浩通