【M&A仲介実施事例】山奥のピカピカな建設会社のM&A成功録
1.創業の経緯は異色の経歴
栃木県のある山間部にて建設業を営むX社。
現社長であり、創業社長でもあるM社長は、工業高校卒業後、自動車整備会社で働いていたという異色の実績を持つ。
そんなM社長は、兄の就職先である自動車整備会社と同じ町の不動産屋に勤務していた。
時は折しもバブル絶頂期、日本中で土地の価格が爆発的に高騰していた。
そんな時、兄から「お前も不動産業に挑戦してみないか?」と言われ、兄が勤める不動産会社に入社した。
そこで任された業務が測量である。
後に建設業土木を行う上で、礎となる業務なのだ。
2.スーパー建設業までの道のり
測量業を毎日こなし、腕も上がったところで、宅地用の造成工事を依頼したO建設会社の社長との出会いが、更にM社長の運命を変えることになる。
O社長から「お前も建設業をやってみろ!やる気があるんならいくらでも教えてやるぞ」と言われ、一念発起で建設業を創業したのだった。
最初は、O建設会社から土木全般の仕事を受けて、重機を使いこなしながら日々をやりくりした。
その結果、顧客数と年間の売上高も安定し、土木一本でもやっていける状態であった。
しかしこのM社長は、非常に努力家で、既に取得済みの土木施工管理技術者1級に甘んじず、次に建築施工管理技術者1級、2年後には管工事施工管理技術者1級、その翌年には造園施工管理技術者1級を取得していった。
それに伴って公共工事の受注も増加し、資格を持った社員と作業員もドンドン増えていったのである。
気づいてみれば年商7億の企業になっていた。
3.譲受側との関係性は徐々につくられていった
そんなある日、M社長が67才となり45才の時に授かった一人娘から衝撃の一言があった。
「私、建設屋はやらないよ!ネイルサロンを開くんだ」と言ってきたのである。
特に将来の事業承継をM社長から話したわけでもないのに、唐突な娘からの発言にさすがの社長も戸惑った。
そこでISOで長年関わってきた弊社にM&Aに関する相談が舞い込んできたのである。
当時は、銀行数行からもM&Aによる譲渡を打診されていたようである。
しかし長年に渡ってISOやBCPのコンサルと寄り添った営業担当者との信頼関係から弊社にM&A仲介コンサルの依頼が来たのである。
弊社は、栃木県内の建設業300社、茨城県内で200社の取り引きがあり、ほとんどはSAまたはAクラスの企業ばかりである。
そんな中、年商15億円で土木、特に農地整備に強みを持つG社との事業での相性を感じ、G社長に声をかけてみた。
栃木弁丸出しのG社長は、一見ぶっきらぼうだが、経営の勘は的を射た鋭いものがある。
早速トップ面談を競合の買い手候補と同時期に実施した。
面談の結果、売り手のM社長と買い手候補のG社長の波長がピッタリ合った。
その後も面談を重ね、譲渡前ではあったが仕事の受発注を互いが数回行った。
互いの会社の力量も分かり、工事代理人同士の相性なども自然な形で分かり、両社の関係性は徐々に深まっていたのである。
そして面談から半年後、めでたく株式譲渡成約式が執り行われ、M&Aが完了したのであった。
4.M&A後の相乗効果
M&Aから1年半が経過した。
M社長は、相談役となりほどほどの頻度で出社をしている。
M社とG社の売上高は、互いの受発注を効果的に進めることができたため、売上高がM社は30%アップ、G社は20%ほどアップさせることができている。
また、社員の交流の盛んに行い、独自の出向制度を活用して、技術的共有と人員の融通を上手に進めることができている。
最近は、県内でもこの案件が知られてきて、建設業界での大きな成功事例として、M相談役、G社長ともに同業者から、成功のポイントに関する質問を多数受けているようである。
株式会社エルシーアール 代表取締役 荒井 浩通