【M&A事例】掛算式のM&Aは、人生を好転させる相乗効果あり
1.真面目な仕事ぶりなのに利益が出ない・・・
茨城県の西部で解体業を営むP社。創業から27年の業歴である。
創業者のM社長は、元々スクラップ業のスゴ腕営業マンであった。
あるきっかけでスクラップ業を退職することになり、取引先の社長の勧めにより、これまでのネットワークが活かせるとの理由から、解体業を創業したのであった。
しかしM社長は、自身で解体業をやったことがなく、知人の解体業の社員に声をかけ、自身は営業として、声をかけた方には現場の施工監督として業務をスタートさせた。
仕事のモットーは、「まじめにしっかりと仕事をやり切る」ということであった。
M社長は、非常にまじめかつ正直で、優しさがにじみ出る性格である。
また、プライベートでは、地元のボランティア団体と連携をして、東日本大震災の時やウクライナ問題の時なども、チャリティコンサートや義援金募集などを積極的に行うような一面も持っている社長だった。
しかし業績は思ったように展開できておらず、年商3億円程度、しかし営業利益は、年間数百万円か赤字が交互にくるというような状況であった。
そのような経緯から、長期負債が2億円。純資産は、ほぼ0円という経営体質の側面があった。
そしてM社長は、あと3年で70歳を迎えるというタイミングに差し掛かっていた。
2.掛け算式の相乗効果とはこれだ!
そんな中、3年後の70歳を見越して、今後会社の事業承継をどうするかという課題が浮彫になってきた。実はここ最近、若手の社員から、「社長!今後の経営の後釜をどうするんですか?本当に会社を継続してくれるんですか?私は家族を扶養しているので、ハッキリしてくれなきゃ困ります!」との意見が出るようになってきた。
また金融機関からの負債も2億円あり、会社のM&Aを決断したのであった。
M&A開始当初は、同業者である解体業、収集運搬業者と処分業者とのマッチングが連続して行なわれた。
しかしM&Aにて相乗効果を出し、利益を出して金融機関からの借り入れを返済することをシュミレーションしてみると、恐ろしいほどの長い年月がかかることが明らかであった。
もちろんマッチングの結果は、どれもブレイク(破談)してしまったのである。
3.やっと枕を高くして寝ることができる
そんなある日、エルシーアールの取引先である処分業者の社長に譲渡社名を伏せ相談をすると、明確な答えが返ってきたのである。
「うちの元社員で、解体業者と処分業者をマッチングさせる仲介業をやっている奴がいるんだよ!そいつが解体業者を譲り受けたいと言っていたから行ってみてよ」との即答であった。
早速、仲介業であるF社に会い、解体業のP社情報を開示した。
すると業界通であるF社の社長は、P社の評判を以前から聞いていた。
その評判とは、「真面目に仕事をきっちり行い、ずるいことをしないM社長」ということであった。
とかく悪いうわさ話がつきまとう業界にあって、P社が行う仕事は、とても高評価である。
しかもF社がP社を譲り受ければ処分費を大幅に圧縮することができるらしく、途端に利益体質に転じる可能性が高いことが見えてきた。
なぜならこの解体業のP社は、駆け引きをしないM社長のため、処分費用がかなり高めに設定されていたのである。
そこに目をつけたF社は、これからは大きく利益を出すことが可能であると読んだのであった。
しかもF社に舞い込んでくる解体の仕事も、P社に振ることで相乗効果が大きく発揮されることも明確になったのである。
4.譲渡後の相乗効果は予想以上!
何回かの面談と買収前監査を踏まえた結果、めでたく株式譲渡の調印となった。
現在、解体業P社と仲介業F社には、これまでにないくらいの仕事が舞い込み、うれしい悲鳴を日々あげているとのことである。
正に掛算式のM&Aがここに成立したのである。
調印式後、譲渡企業の奥様からお礼の手紙を頂いた。
そこにはこんなことが書かれていた。
「この度は、いいご縁の企業様をエルシーアール様にご紹介いただき本当に感謝しています。ありがとうございました。(中略)実は、私たち夫婦は、ずいぶん前から、もし会社が誰かに譲渡できず廃業になってしまった場合、連帯保証人の関係でP社の借金を肩代わりしなければなりませんでした。そのために私たち夫婦は、2億円の返済用の預金を準備していたのです。今後は、このお金をこれからの人生に使うことができます。・・・」
今回のM&Aは、単なる譲渡案件というだけでなく、従業員の雇用も守れ、かつ譲渡オーナーの人生も大きくプラスに転換することができたという内容であったと感じる。
株式会社エルシーアール 代表取締役 荒井 浩通