【コラム】海外勤務で思うこと⑥
6.海外での生活環境
日本人の海外永住が増え続けています。生活拠点を移した永住者の数は2023年時点で前年比3%増の57万人となりました。世界各国が経済成長し、賃金が上がっていく中、日本は過去30年間で実質賃金の伸び率が0.1%とほとんど増えていません。日本の労働生産性の低さと労働環境に対する不満が海外永住者増加の一因ではないでしょうか。
長年の海外駐在で感じたこと、現地での仕事、生活で感じたこと、日本との違いについて、6回にわたり書いていきます。最終の第6回目は海外での生活環境についてです。
海外に住んでみると日本の素晴らしさに気づきます。日本は海外と比べ治安がよく清潔、医療レベルも高く、春夏秋冬の四季を楽しめます。
海外ではほとんど自動販売機がありません。治安が悪く、すぐに壊され盗難に遭うからです。日本の殺人発生率は10万人あたり0.2件。154ヶ国中で151位と最も治安の良い国なのです。
アメリカ駐在中のクリスマス休暇でカナダに旅行に行った時のことです。トロント市内のホテルに泊まるため、市内の駐車場に一晩、車を止めていました。車上荒らしに在ったのです。助手席の窓ガラスを割られ、車内にあった物を盗まれました。帰りは窓全開で冬のカナダからオハイオまで700km走りました。
アメリカでの生活では、延べ床で80坪の家を、エアコンで1年中適温にしていました。外気温がマイナス20℃でも室内は20℃に保ち、寒い思いをしないですみます。
電気代も安く、空調は電気ですが、一番厳しい冬でも月400ドル程度でした。
インドネシアではジャカルタの中心部で白昼強盗にも合いました。比較的治安の良い地区にある外国人向け自宅アパートから徒歩で5分ほどの場所です。海外では昼間に歩いて出かけることも危険が伴うのです。
医療レベルは、インドネシアは酷いものでした。歯の治療に行けば、抜かれるし、健康診断で癌の疑いがあり、2次診断をジャカルタで受けましたが、千ドルも払って、医者がMRIの結果判定が出来ないというありさまでした。3大疾病になると命の危機になります。
長く海外生活をして、日本に戻って感じることは、日本特有の生きづらさです。日本人は礼儀正しいと言われていますが、ルールに厳しく、周りの目を気にしすぎると感じます。
周りとの違いがあると、目立ってしまい、妬みや反感を買って叩かれるということになるのです。責められる側になると、小さなミスでも周り中から責められる、相互監視社会で、過剰な正義感が息苦しく感じさせます。治安の良さにつながっている側面もあるのですが、社会全体の寛容性の低さを感じます。
海外のどこに住んでも、良いこと、悪いことがあります。悪い部分ばかりに焦点を当ててしまうと、不満ばかりを感じてしまい、精神的な充足感を得ることが出来ません。
海外生活で成功するには、良いところに目を向け、周りの人に感謝し、自ら現地に溶けこもうという積極的な気持が大切なのです。
良き地域住民として地元の人々に愛され、現地で必要とされ、現地の役に立つことで、海外生活がとても充実し、精神的な豊さを得ることが出来るのです。(おわり)
株式会社エルシーアール コンサルタント 秋間 和洋
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