【コラム】人事評価の誤りについて
新型コロナウィルスの脅威がじわじわと身近に迫りつつあります。皆さんはいろいろ気を付けてお過ごしのことと思います。
何のための評価制度か?
今回は人事評価の誤りについて前職での経験などを書きます。ご存じのように人事評価(じんじひょうか)とは従業員の業務の遂行度や業績、能力などを評価し、キャリア形成に役立てるとともに賃金や昇進等の人事施策に反映させるしくみのことです。前職では総務をしばらく担当していました。賞与や昇給の時期になると、各部から出された人事評価の調整に苦労していました。
評価のネジレはなぜ起きる?
ある部署の人事評価表を確認していると、次のようなことがありました。評価点の高いAさんが、評価点の低いBさんよりも順位が下になっていました。
担当課長に話を聞くと、課の評価では評価点が高いAさんが当然ながら順位は上だったそうです。その後、部内で他の課との調整を行っているときに、部長からAさんとBさんではBさんの方が順位は上なのではないかと言われたそうです。理由は1つの評価項目が圧倒的にBさんの方が優れているとのことでした。課内での評価でもその項目はBさんの評価点は高かったのですが、全体での評価点はAさんの方が上でした。担当課長は1次評価をしたAさんとBさんの上席係長に確かめましたが、担当業務が違うため指摘された項目で部長が言うほどの差があるかどうか判断がつかないとのことでした。課長は仕方なく部長の意見に同意し、部長は指摘した項目の3次評価点数は変えずに、順位を入れ替えました。
評価エラーの根本にあるもの
この事例にはいくつかの誤りがありました。
- 制度上の問題としては課の業務ステップに沿った重要成功要因は決めていたが、業務内容が違う係ごとには決められてなかったので係間の調整は課長の感覚に頼っていたことです。
- 評価者の主観が入り、評定誤差(人事評価エラー)を起こしていました。
- ハロー効果:部長はAさんのある突出した能力に着目して、そのほかの項目についても高い評価をしてしまった。
- 親近間によるエラーと論理的誤差:部長はAさんへの親近感と自分が持つ独自の論理によって評価を付けてしまった。
- 逆算化傾向:結果ありきで、その帳尻あわせのための評価を付けてしまった。
まだまだ見られる評価エラー
評価の誤りは、この他にもいくつかあります。
- 先入観によるエラー:性別や年齢、学歴や見た目などの先入観によってよい評価をしたり、悪い評価をしたりしてしまう。
- 厳格化傾向:どの評価者に対しても不当に厳しい評価をしてしまう。
- 寛大化傾向:どの評価者に対しても不当に甘い評価をしてしまう。
- 中心化傾向:どの評価者に対しても平均的な評価をしてしまう。
- 対比誤差:評価者自身と比べ、批評家者の評価を行ってしまう。
- 近接誤差:評価期間終盤のできことが印象に残り、期間全体の評価に及んでしまう。
- アンカリング:最初に示された結果を無意識に基準にしてしまう。
これらには共通した大きな誤りがあるのですが、詳しくは次回お伝えしたいと思います。
株式会社エルシーアール 事業推進部 大木 啓樹