【コラム】評価についてーその3(人材ビジョンを推奨行動で明らかにする)
暑さ寒さも彼岸までと言われていますが、今年も9月下旬から一気に季節が変わりました。幸いなことにまだ昨年のような大きな台風被害は出ていませんが、先日の台風は観測史上最大の勢力になることが心配されていました。まだまだ台風に対する備えを怠るわけにはいきません。
正しい人事評価に近づけるには?
さて、前2回は評価制度の陥りやすい誤りと、評価制度の目的について触れました。今回は何をすれば正しい評価に近づけ、社員のキャリア形成が進むかを前職での例を参考に考えてみます。
前の職場では等級制を採用していました。高卒で入社したばかりの1等級の人が行う業務のレベルは、例えば指導を受けて正しい業務を行えるなどのような等級要件が決められ、それに基づいて全社共通の評価表が作られていました。1~3等級の一般社員の評価項目は、1諸ルール順守、2安全確保や事故や緊急時の対応、3業務遂行、4業務効率、5成果について5項目ほどの着眼点がついて0点(問題外)~5点(抜群:上位等級レベル)の絶対評価を行いました。
なぜ、評価の理解に幅があるのか?
ところが、各部署で採点された評価表を一覧にしてみると、評価者の点数の理解に幅があります。評価の基準がバラバラで、評価する人によって変わったり、評価される人の異動により評価の一貫性に疑問がでたりすることがありました。社員は年に3回ある評価をもとに自分のキャリア形成を考えますから、これでは戸惑ってしまいます。また、評価は昇給額や賞与金額にも影響しますので納得性が下がりモチベーションにも悪影響が出ます。
では、評価の全社的な着眼点があり、評価者教育を行い、評価結果の不明点は人事部門が聞き取り評価の基準は都度調整していたのに、なぜこんなことが起きるのでしょうか。
等級要件と等級ごとの評価表はいわば憲法にあたるもので、すべての職種に当てはまるように汎用的な表記になっています。職種ごとの解釈は基本的に評価者に任されていましたので、人事部門は評価のたびに評価のもとになる具体的な行動を聞き取り、評価者による基準の違いを調整していました。
しかし、制度として「職種ごとに評価項目の着眼点で推奨される行動」=「判例」を具体的に表記しておくことがうまく進んでいませんでした。
これでは、評価のフィードバックをする時も推奨される行動に対して現状はどこまで出来ているのかを示せません。評価された人もどこを改め、何を伸ばせば自分が成長できるのかが分かりません。具体的な行動を示しておけば、評価者が変わっても評価基準は同じで、評価が大きく変わることはありません。着眼点を一般的な言葉で書くのではなく、業務フローに沿って具体的な推奨行動として表記することが重要です。
実際に評価者が点数を決めるときは、評価者自身が持っている行動基準に沿って評価をしています。それを文章にすることで、推奨行動が明確になります。暗黙知を形式知に高めることが重要になります。
評価を行う目的
では、具体的な推奨行動はどうやって決めるのでしょうか?
人事部門は評価者が推奨行動を決める基準を示さなければなりません。それは「企業の価値=企業のビジョン」を達成するのに求められる「人材ビジョン」に他なりません。「企業のビジョン」と「人材ビジョン」を評価者である管理者と中堅リーダーに浸透させることが重要です。
評価結果を評価された人に示しフォローすることで、人材ビジョンを全社に浸透し、キャリア形成の基準とします。いわゆるエンゲージメントを示すことができます。
評価はこのために行うのです。
次回は、全社の「評価レベルの統一」=「評価の横串を通す」について考えてみます。
株式会社エルシーアール 事業推進部 大木 啓樹