【コラム】部下を成功させる方法⑥(最終回)
6.主体的に行動する「部下育成」とは
いつも「答え」を与えていませんか
「主体性」という言葉は、今の社員教育におけるキーワードです。自主的、積極的、自立、など似たような言葉が多くあります。検索すれば違いを知ることはできますが、主体性とは、「自分の意思や判断に基づき、責任を持って行動すること」と明記しています。自分の考えによって取るべき行動を選択するだけでなく、自らの行動がもたらす結果にも責任を負うことが出来る、という意味合いがあります。「そんな部下が育てられれば苦労はしない!」という方もいると思いますが、苦労しなければ部下は育ちません。
部下育成に関わっている方は、部下が主体性を持って仕事ができるようにと指導していると思います。しかし、思っていることと実際の行動(対応)が違っていることが多いです。つまり、部下に考えて仕事をしてもらいたいと思っているのに、実際は部下に期待する行動の「答え」を与えてしまっているということです。
その要因の多くは、部下育成側に(が)
- 時間的、精神的な余裕がなく、「答え」を与えた方が早く終わる
- しゃべりすぎている
- 指示、命令を通じて「答え」を与えてしまっている
ということです。身に覚えはありませんか。
「主体性」を待った部下を育成したいなら、部下にあれこれと教えて(答えを与える)はいけないのです。教えずに空白を作り、その空白を部下自身に埋めさせることが部下育成において重要です。
ここで必要となるスキルとして、「ティーチングとコーチング」があります。ティーチングの目的は、「答えを与える」ことで、コーチングの目的は、「自分で解決できるように支援する」ことです。部下の状況(時・ケース・習熟度、等)に合わせて、ティーチングとコーチングを使い分けて育成するということです。
時間はかかりますが、最終的に部下にとっても上司にとっても良い結果となります。
「部下育成」のための環境づくり
「部下育成」は、管理職や中堅社員に求められている役割です。自分自身の仕事をしながら、部下育成も同時にするということです。特に中小企業においては、人員不足により自分の仕事をこなすだけで精一杯で、部下の面倒まで見切れないという状況に陥っている上司も多いと思います。厳しい状況ではあると思いますが、やらなければならないことですね。
私自身が中小企業の人材育成に関わる中で感じていることは、
- 部下育成にあたる立場の人の意識・行動改革が遅れている
- 部下育成がうまくいかない状況を部下自身の問題にしている
という点です。
部下育成においても、今と昔は違います。違いについては、その違いを感じている人もしくは理解している人も多いと思います。しかし、「どのように」したら、主体性のある部下に育成できるのかという考え方と実践方法を積極的に習得しようという環境がありません。上司であれば、自分で学び実践するべき、という意見があるのも当然ですが、孤軍奮闘するよりも全社員を巻き込んで部下育成をした方がより効果的です。
若手社員を育成したいと考えた時、大半の企業は、まず「若手育成研修」を企画します。自分たち上司から学ぼうと考えません。若手が成長するために知識を与えることは必要なことです。しかし、若手が学んだこと現場で実践した時に弊害となるのが、部下育成に対して意識・行動改革ができていない上司です。上司自身が経験した仕事のやり方(本人とすれば正しい)で、若手の新たな行動を否定してしまっているのです。これは上司個人の問題ばかりではなく、今までは当たり前だった企業風土にも問題があるものです。
主体性に行動する「部下育成」を成功させるには、『部下をさせる方法』1~6に掲載した方法は有効です。この方法をより効果的・継続的にするためには、全社員(部下と上司)が協力して行うこと、そういう企業風土を創っていきましょう(おわり)
株式会社エルシーアール 人づくり講師 金島 浩明
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