【コラム】想定外と不祥事は、なぜ繰り返されるか 最終回
最終回 ~withコロナ時代への提言~
2020全米女子オープンゴルフは、渋野日向子さんが首位に立ちながら最終日に崩れて、惜しくも優勝を逃しました。その敗因は「寒さに対する準備不足」だったと分析します。
他の選手がタートルネックにセーターやダウンベストを着込む中、渋野選手は首が開いたトレーナーにウィンドブレーカーという薄着のため、体が冷えて思うように体が動かず、ショットやパットに少しずつズレが生じたからです。
想定外を想定内に変えるには
そもそも「想定」とは人が思考の中でつくる境界のことで、その境界の外側が「想定外」で内側が「想定内」になります。
「リスクを予測する」
思考の境界を狭くしている人は想定外の事態は起き易くなり、リスクを予測して思考の境界を拡げている人は想定外の事態は起き難くなります。
最終日のコンディションは、渋野選手にとっては「想定外」であったかもしれませんが、寒さを予測して準備した韓国選手にとっては「想定内」であったに違いありません。
「危機意識を高める」
危機意識が低かったために想定外の事態に陥った事例は次の通りです。
・東電の旧経営陣:津波が防潮堤を超えた場合の対策を先延ばして原発事故に至った。
・タカタの経営者:エアバッグの欠陥による事故を軽視し、企業倒産に追い込まれた。
・政治のリーダー:新型コロナウィルスの感染力を軽視し、医療崩壊の危機を招いた。
「withコロナ時代」においては、リスクを察知して対処できるように、組織のリーダーに高い危機意識が求められます。
「原理原則に基づく」
感染症においては、感染者の早期発見と隔離が原則です。しかしながら、新型コロナウィルスの第一波において「高熱が数日続いてから検査」という誤ったメッセージによって、重症化する方や死亡する方が発生し、想定外の混乱を招きました。
Withコロナ時代におけるリーダーは、このような混乱を招かないために、原理原則に基づいて理にかなったメッセージを発信しなければなりません。
不祥事の流れを断ち切るには
不祥事を起こした企業の第三者委員会の報告書に「倫理観の不足」という指摘がよくありますが、企業不祥事の当事者が全て「非倫理的な人間」というのは疑問です。
「組織を変える」
日本の場合、利得のために不祥事を行う人もいますが、悪い事だと知りつつ「会社のため」「顧客のため」と手を染めるケースを多く耳にするからです。
だとすると、個人ではなく組織を変えなければ不祥事は繰り返されることになります。
「損得勘定をしない」
不祥事に手を染めるかどうかの瀬戸際に立たされると、不祥事につながる行動をとった場合と、取らなかった場合の「損得勘定」をすると言われます。
例えば、大事故につながる自動車の欠陥が判明した場合、正規ルートでリコールを行うか、リコール隠しで対処するか、という不祥事の瀬戸際に立たされるわけです。
不祥事の流れを断ち切るには「損得勘定をしない」という決断が必要です。
「止める仕組みをつくる」
どんな方策でも欠点は必ずあります。欠点に気づいた時に一旦止めて欠点をなくせば、成功へつながります。
小さな欠点だからと言って見逃すと、次に気かついた時には大きな問題となって「隠ぺい」の瀬戸際に立たされる可能性があります。そうならない様に欠点が分かった時点で止められる仕組みが必要です。
GoToキャンペーンは良い企画ですが、欠点は停止する条件を定めていないことです。ブレーキの利きが悪い自動車をリコールせず、お得価格なので注意して乗ってください。と言っているようなものです。
このキャンペーンを停止した政府の決断は、新型コロナの感染防止を国民に要請するだけの方策から一歩前進しでおり評価したいと思います。(おわり)
株式会社エルシーアール コンサルタント 嶋脇 寛
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