【コラム】リスクをチャンスに変えてイノベーション④
4.リスクをチャンスに変える事例
イノベーションのジレンマ
“今日良くても明日は悪くなる”一見ネガティブな捉え方にも聞こえますが、好調なときこそ、企業では投資をかけられます。それを元に次の一手を打つべきと思います。
「そうは言っても現実的にはできない」との思考は必然的な意識から生まれてくるものです。
今回、詳細は述べませんが、これらを“イノベーションのジレンマ”といわれています。
イノベーション事例
これらを乗り越え、ビジネスイノベーションを図っている企業に富士フイルム株式会社様があります。
かつて銀塩カメラのフィルムを主力とするメーカーであったことは誰でも知るところです。しかし、現在ではデジタルカメラへのシフトはもちろんながら、新規事業として、化粧品やサプリメント、抗菌用品を市場投入しています。
ホームページを拝見すると、その風土を企業理念・ビジョンとして保守的で待ちの姿勢ではないことを明確に示しています。
「オープン、フェア、クリアな企業風土と先進・独自の技術の下、勇気ある挑戦により、新たな商品を開発し、新たな価値を創造するリーディングカンパニーであり続ける。」
まさにリスクをチャンスに変えるべくキーワードとなる“勇気ある挑戦”、“新たな価値を創造”が示されています。また、コーポレートスローガンとして「Value from Innovation」を制定しています。
※筆者は富士フイルム株式会社様の利害関係者ではなく、認識に誤りがあるかもしれませんが、そこはご勘弁いただきたく思います。
※(ご参考)また、現在では富士フイルムホールディングス株式会社の傘下として、富士フイルム株式会社と富士ゼロックス(現:富士フイルムビジネスイノベーション)を置く体制となっています。
順風満帆と思っていたフィルム事業もカメラのデジタル化の波によって一気に落ち込みました。恐らく、岐路に立ってからの行動では遅かったのではないでしょうか。早期に以下の2例の様なことを検討していたものと思います。
例1 業界変革のリスク対処
(リスク)市場がデジタルカメラにシフトし、フィルム事業の落ち込み
(強み)フィルム製造における基盤技術でもあるコラーゲン加工技術保有。そして、フィルム劣化を防ぐ抗酸化技術保有
(新規事業)化粧品事業への参入
(弱みを対策)化粧品販売ルートがなく、通信販売での展開
例2 感染症流行のリスク対処
(リスク)コロナウィルス感染症(COVID-19)の流行
(強み)これまでの製薬量産製造資本保有
(新規事業)ワクチン・治療薬のプロセス開発・製造受託
(弱みを対策)新規薬品の開発力不足により大量製造に備えた受託に特化
また、これまでの保有基盤技術だけでは、新規事業への展開はできません。恐らく様々な分野の企業とのコラボレーションを実施しているに違いありません。
新規事業開拓に向けて、ポートフォリオにより自らの保有技術を棚卸し、不足技術を明確にし、技術提携を実施しているのではと思います。
現在はB to B、B to CやCo-operationの時代であります。自社だけでの製品実現を検討する時代ではありません。更に市場貢献を図るためには他社とのコラボレーションは必然であり、必須であることも忘れてはいけないと思います。
尚、更に言えば、富士フイルム株式会社様はこれまでのフィルム事業から撤退はしていません。「成熟産業における深化」と「新規産業における探索」の両方を同時に行う方針で取り組んでいます。最近では銀塩の表現力が見直され、インスタントカメラが密かなブームになっているようです。
※(余談ですが)だからこそ、今もなお社名は富士フイルムなのかもしれません。
「うまくいっているから変えない」のではなく「もっとうまくいくように変える」ことが重要だと思います。行き詰ったら本質を追求しましょう。その力量も必要になることも肝要と思います。
四回に渡り、リスクをチャンスに変えるイノベーションについてお話しさせていただきました。
読者の方で少しでも解決に向けて一歩踏み出すきっかけになれば幸いに思います。
お目通し戴き、ありがとうございました。(おわり)
株式会社エルシーアール コンサルタント 亀田 勝
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