【コラム】部下を成功させる方法④
4.部下育成における「褒める」の効果
部下を褒めていますか?
リーダーや管理職の方の研修の際に「部下を褒めてますか?」と聞くことがあります。様々な返答がありますが、「褒める」ことを意識して行っている人は少ないようです。褒めていても、取ってつけたような褒め方なので、褒めたことを忘れている場合もあるようです。
また、褒めたくても、
「仕事が忙しくて、余裕がない」
「褒めることがない」
「何を褒めたらいいのか…」
等の理由もあるようですね。
社員教育の場で良く紹介される「山本五十六の格言」。
『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば人は動かじ。』
この格言でも「ほめて」という言葉があります。
部下のモチベーションを高めたり、社内で良好な人間関係を築く為に、「褒める」ということは重要な要素であることは間違いありません。
今回は、「褒める」ことの効果についてお伝えします。
「褒める」の2つの効果と注意点
人は褒められると嬉しいですよね。もちろん、個人差はありますが・・・。
褒められれば、
「辛いことや苦しいことがあっても頑張ろう!」
「早く新しい仕事を習得するために努力しよう!」
ということはよくあると思います。
ともすれば万能薬のように思える「褒める」という行為ですが、使い方を間違えると部下のパフォーマンスやモチベーションの低下を引き起こしてしまうこともあります。
効果① 内発的動機付け効果(エンハンシング効果)
「褒める」「仕事ぶりを認める(評価する)」といった行為はモチベーションとなり、「もっと頑張ろう」という意欲につながります。褒める(外発的動機づけ)ことで、主体的なやる気(内発的動機)を高めることです。
上司部下にかぎらずお互いが承認しあい「褒めあう」ことで、能力を発揮しやすい職場づくりにつながります。
効果② 期待効果(ピグマリオン効果)
上司が部下に対して期待をかけて接することで、部下の能力やパフォーマンスの向上につながります。期待していること(行動と成果)を具体的に表現し、行動や成果を「褒める」ことが大切になります。
逆に、期待されていない(行動と成果が不明確=褒めない)と感じるとパフォーマンスは下がってしまいます。
部下教育において、効果①②を高めるには、
主体的な目標設定+「褒める」
という行為をセットして、部下のやる気アップにつなげるのがポイントです。
褒めることの注意点と対処法
褒めることは様々なプラスの効果を持っていますが、注意点もあります。
それは、「褒めることは依存につながる」という側面もあるということです。
つまり、「褒める」ことを一種の報酬としてしまうと、報酬を与えることで主体的な動機が失われてしまうということです。当初の目的・目標が、単に「褒められたい」ということに変わってしまう。
では、依存に繋がらないように褒めるには、どうすれば良いのでしょうか。
一つ目は、成果や能力だけではなく行動や努力そのものを、「褒める」ことです。ビジネスでは成果を求められますので、成果に対して褒めることはとても重要です。
しかし、成果や能力ばかり褒めると、失敗を恐れるようになり、主体的な行動やチャレンジ精神がなくなる傾向が強くなります。
行動や努力を褒めることで、行動を繰り返そうとする意欲・向上心が生じます。
仮に成果が出なかった時でも、行動や努力を褒めることで
・粘り強く行動をする
・高いチャレンジをする
ようになります。結果的に、成果が上がるようになります。
二つ目は、「褒める」頻度を考える事です。
行動や努力そのものを褒めるといっても、毎日毎日同じことを褒めていては褒められる方も慣れてしまい、ありがたみがなくなってしまいます。
「ここぞ」というタイミングで「褒める」ことが大切です。
最後に
「褒める」とは部下育成や人間関係を形成する上で重要な要素です。単に褒めればいいということではありません。
「山本五十六の格言」の続きは知っていますか。
『話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば人は育たず。 やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば人は実らず。』
部下を仕事上で単純に褒めるだけではなく、
・双方向のコミュニケーションを意識して行い、
・人間として承認し、
・お互いに感謝しあう関係
こそが部下を育成するうえでの本質であり、 「褒める」ことが最大限の効果を発揮する前提なのです。
「褒める」という行為に不慣れな上司からすると、褒めることは難しいと考えています。
その理由の1つに、「褒める=称賛」とだけ考えていることがあります。「感謝を示す」ことも「褒める」ことと同じです。まずは、「感謝」を言葉で伝えることから始めてみるのも一案です。(第4回につづく)
株式会社エルシーアール 人づくり講師 金島 浩明
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