【コラム】部下を成功させる方法⑤
5.部下育成における「叱り方」とは
叱れない上司が増えている
部下育成において「叱り方」というと、まず、「怒る」と「叱る」の違いを知ることから説明が始まります。ごく簡単に説明すると、「怒る」は自分本位、「叱る」は相手本位ということです。
しかし、この2つの違いを知ったからって、叱れるかというとそうではないようです。叱れない理由は他にあるようですね。
多くの叱れない理由として、
・パワハラだと思われる
・嫌な態度を取られる
・やめられたら困る
等々いろいろな理由があると思います。
叱れない人の特徴として、「叱ってはいけない」と思っている人が多いように思います。その理由としては、昨今、「褒める」教育が重要と言われているので叱ってはいけないとか、過去にられた(怒られた)ことで嫌な記憶があったり、られたことで良い結果につながったという経験がない人です。
つまり、叱れない人の多くは、叱られた(怒られたにしても)ことで、その後の仕事で役に立ったとか、よい結果につながったという経験がないのです。だから、自分が叱られたことで上司に抱いた感情が重なり、「仕事がやりにくくなるのではないか」「辞めると言われるのではないか」と考えてしまい、叱ることを躊躇してしまうのです。叱らなければいけないと思いつつも、叱った後のリスクを考えると、「このままでいいか・・」と思ってしまうようです。
今の若手社員世代は、様々な特徴から「叱り」にくいし、「叱り」にくい世の中でもあります。しかし、部下の成長を期待し教育する上で、「叱る」ことは、「褒める」と同様に必要なことです。
上手な「叱り方」
叱らなければならない時は、どういう時ですか。
「頭にきた」からですか? 「頭にきた」というのは「怒り」ですよね。
では、何で「怒」っているのですか? 「怒り」の理由です。
「怒り」というのは、上司の期待に対して、部下の行動・結果が伴っていない時、つまりギャップがある時です。この「頭にくる」という「怒り」の感情を、そのままストレートに部下にぶつけると「怒る」になってしまうことになります。この行為は、ただ反感を買うだけです。お互い何の利点もありません。
では、「叱る」にするにはどうしたら良いのでしょうか。
大事なポイントは、2つあります。まず1つ目は、「なぜ叱られるのか」という理由を明確にして論理的に部下に伝えることです。今の若手社員の特徴として、「なぜ」という理由や「何のために」という目的を明確に伝えられ理解できないと主体的に行動しないということがあります。つまり、「何で叱られいるのか意味が分からない」という状態では、その先の話は進まないのです。
2つ目は、「叱る」ことが部下の成長につながっているということです。期待に対してギャップがあれば多少なりとも「怒り」の感情は出てきます。「怒り」の感情を出してはいけないというのではなく、「怒り」の元となっているギャップを、部下に対する「要望」(必要な行動・プロセス)に変えてから「叱る」という行動に移すことです。つまり、「叱る」は、ただ間違いを指摘することではなく、部下の成長に必要な行動・プロセスを伝え共有しあうことです。
ちなみに、「叱る」というと「大声」「興奮」というイメージが伴いますが、そうではありません。「叱る」という行為は、部下に上司の期待や思い、ギャップを埋めて成長していくための「要望」を理解してもらうために、言葉に思いやメリハリをつけて表現し、「伝える」ということです。
「叱る」ことは、思った以上にエネルギーを使いますよね。同じ部下を何度も叱りたくはありませんしね。お互いに、「って良かった!」「叱られたことが良かった!」という良い経験になる「り方」を知り、身につけていきましょう。
ただし、上手な「叱り方」をしても、日頃からの『関係性』が悪いと効果的ではありません。叱って好かれる上司と嫌われる上司との違いはどこにあるのでしょうか。もう一度、振り返ってみましょう。(最終回につづく)
株式会社エルシーアール 人づくり講師 金島 浩明
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