働き方の多様化と企業研修
かつてリーマンショックやコロナショックによって社会情勢が大きく変わりましたが、働き方が多様化する中で企業研修に臨んだ事例を紹介させていただきます。
企業研修のスタイル
正規社員の研修が主流だった時代は、ガバナンスやコンプライアンスの強化のためルール順守の研修が基本で、受講者の態度や発言にも指導が入るというスタイルでした。
その後、非正規雇用者が増加すると業務スキル研修が中心となり、研修テーマは業務効率アップやコストダウンなどで、企業の人事戦略も人的資源を最大限に活用することでした。
最近では、キャリア形成を支援するスタイルや、会社生活での経験から従業員が得られる価値を向上させるスタイルがみられます。
いずれの研修スタイルにせよ、説明を聴くだけではなく演習やグループ討議を交えて行うことが効果的な研修とされています。
グループ討論・発表なし
今回ご紹介しますのは、契約社員における研修事例です。参加される契約社員はそれぞれ職場が異なり、普段はコミュニケーションがほとんどないという方々でした。そのような状況のため主催する経営者から「グループ討議や発表は行わない方がよいでしょう」と助言いただき、どのように講義と演習を進めていくかが課題でした。
双方向コミュニケーション
1回目の研修においては、グループ討議を行わない代わりに受講者一人一人に簡単な質問をして意見を述べてもらいました。
何人かの方は質問なしで講義のみを希望のようでしたが、何とかQ&Aに参加いただいて双方向のコミュニケーションが少しとれるようになりました。スタート時点の「聴く研修」から「考える研修」に一歩近づきました。
一律を求めない多様性
2回目の研修においては、一律にテキスト内容を説明するのではなく受講者の状況に応じて個別に最適化することを意識しました。
また、研修題材も関心が高そうな「ヒューマンエラーの防止」を選んでいただきました。
「通園バスの園児置き去り事件」のケーススタディーで「もし園児が自分の子供だったら」と受講者に問いかけ考えてもらったところ、公表された原因と対策に対し「納得できない」「あきらめが早い」「真剣さが足りない」の反応がありました。
また、受講後のアンケートでは「指名されると緊張するが、しっかり考えることができた」「色々な見方があることが分かった」「真剣に向き合うことが大切だと思った」「班編成してディスカッションがあると面白い」等、当初はなかったコメントがみられました。
多様性の時代において、このような対話型の研修は賛否両論あると思いますが、受講者の反応に手ごたえを感じております(おわり)