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【コラム】想定外と不祥事は、なぜ繰り返されるか 第4回

 

 

 

 

 

 

 

第4回 ~不都合な事実「リコール隠し」~

前回は洪水ハザードマップと三陸津波を例に、「災害情報の伝達ミスや忘却」によって想定外の事故が繰返し起きやすくなることをお話しました。

今回より、想定外の事態から不祥事が発覚した事故や事件の背景に迫ります。

企業ドラマと言えば、池井戸潤が元銀行マンの経験を生かして書いた半沢直樹シリーズが知られていますが、彼の著書「空飛ぶタイヤ」や「七つの会議」は想定外の事態により企業の不祥事が明らかになっていくストーリーが描かれています。

 

ハインリッヒの法則とリコール

労働災害の約5000件を統計学的に調べたハインリッヒの法則は、1件の「重症」災害の背景には29件の「軽症」を伴う災害があり、その背景には300件の危うく災害になりそうな体験「ヒヤリハット」が存在し、更に数千件の不安定な状態や行動があるというものです。

この結果が活用されて、現在では小さな事故やトラブルに気づいた段階で、迅速に対策をとっていくことや、その活動を続けることが安全管理の基本的な考え方になっています。

この考え方を自動車あてはめれば、設計や製造の問題に気づいたら、すぐに対処していくことで、大きな事故を防ぐことができます。

リコールはこのように「ヒヤリハット」することや、「軽症」に気が付いて「重症」になることを防ぐ働きをしていると捉えることができます。

リコールをせずに隠し続けた結果、大事故に至った例が三菱トラックの不幸な事故です。

 

不都合な事実「リコール隠し」

2002年1月、横浜市を走行中の三菱製トレーラーのタイヤが脱落し、歩道を歩いていた母子3人を直撃して29歳の母親が死亡した事故。多くの方はお忘れではないでしょうか。

当時、前例のない想定外の事故、整備不良などと発表されましたが、三菱製の大型車のハブ(車輪と車軸をつなぐ部品)で1993年から38件の破損が発生していました。

ところが、三菱自動車工業の中では、情報を運輸省に見せるクレーム情報Pと運輸省に見せない秘匿情報Hに分けられ、約7割を秘匿情報として「隠れ改修」を行っていました。そのため、この重大な欠陥が表に出ることはありませんでした。

140㎏もあるタイヤが高速度で歩道にいた人間を直撃するということは、確率が極めて低いであろう想定外の事故に見えます。

しかしながら、大型車のハブに強度不足という欠陥があり、破損に至ることを予見して「隠れ改修」を長年続けることにより、いつか必ず起きる事故になっていたと言えます。

仮に破損の確率が極めて低かったとしても、対象数と時間のファクターを充分考慮しなければ、リスキーなシミュレーションとなります。ましては人命にかかわるとなれば、確率で論じることは適切ではありません。

このような不幸な事故を2度と起こさないために、組織の根本から変えることが基本です。まず、組織のトップが「不都合な事実であっても隠蔽しない」と宣言して率先垂範することが求められます。

次回も引き続き、企業不祥事に着目してお話したいと思います。(つづく)

株式会社エルシーアール コンサルタント 嶋脇 寛

 

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