【コラム】マネジメントにコーチングを活かす⑥
最終回 失敗から学ぶ
コーチングというかかわり方を、単に部下の育成だけに留まらず、管理職・マネージャーのリーダーシップの向上やチーム力の強化などマネジメントに活用するという視点でのコーチングの活用について書いています。
第6回は、「失敗から学ぶ」です。
「振り返りは重要」ということは、企業内の研修に出たときによく聞くことだと思います。
「やってみてどうだったか→そこから何を学んだか/気づいたか→次やる時にはどうするか」が振り返りです。
これは一人でもできますが、口に出して話したことで「自分はそう思っていたんだ」と気づいた経験を多くの方が持っていると思います。一人よりも二人で振り返りをすることをお勧めします。この二人でする時に、質問役をする人は、コーチなのです。振り返りは、コーチングだとも言えます。
ここまでは1対1ですが、これをチームやグループで実施することもできます。ファシリテーター役の人が、メンバーに問いかけるのです。1対1でするよりも良い点があります。
場面は、チーム全員で取り組んだ仕事をやり遂げた後での振り返りとします。まず、ファシリテーターが「今回のチームでの取組みをやってみて気づいたことはありますか?」と全員に尋ねます。その時、ある人が気づきを話しました。1対1だと、この後は、「その気づきを次にどう活かしますか?」となりますが、チームでの振り返りでは、「今の○○さんの気づきを聞いて、どう思いますか?」と他のメンバーに話しを振ることができます。別の方が、○○さんの気づきに賛同して、さらに自分の気づきを話したり、場合によっては、○○さんの気づきとは逆の気づきを話すかもしれません。こうして、多様な視点、多様な意見を共有でき、そして気づきがさらに深まっていきます。
このチームでの振り返りを、ぜひ、やってほしいのは失敗した時です。
失敗に目を向けることは誰かを責めることになるように思い、「次、がんばろう」と言って、振り返りをしないことも多くあると思います。失敗の振り返りは「誰が悪かったのか」ではなく、「何が良くなかったのか」という問題に焦点をあてます。その問題を繰り返さないためです。人起因の問題であっても、その人がなぜ失敗する状況に陥ってしまったのか、それを未然に防ぐやり方はなかったのか、を振り返りで深めていきます。
こういった振り返りが習慣となっている組織の力は高くなります。2度と同じ失敗をしないからです。
この振り返りをチームでするにあたって重要なことがあります。これがないと振り返りをやっても話が深まらず、チームとしての振り返りが機能しません。
それは、「心理的安全性」です。
これは、グーグルが発表したレポートによって、有名になった概念です。ひと言で言うと、「このチームの中では、自分が間違った発言をしても、頭から否定されることなく、聞き取ってもらえるという安心感」です。この「心理的安全性」があることによって、失敗を振り返った際に正直にその原因を話すことができる。それによって、どうすればその原因を取り除くことができるのかを話し合うことができるのです。この「心理的安全性」については、お伝えすることはいっぱいあるのですが、それは別の機会に譲ることにしたいと思います。
6回に渡り、コーチングというかかわり方を、単に部下の育成だけに留めず、管理職・マネージャーのリーダーシップの向上やチーム力の強化など、マネジメントに活用するという視点で書いてきました。その中の一つでも、マネージャーの方にとって、実践につながるものがあればうれしい限りです。最後までお読みいただきありがとうございました。(おわり)
株式会社エルシーアール 人づくり講師 竹内 義博
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