【コラム】今、求められる『ものの見方』

 

 

 

 

 

 

正解がない答え探し

少し前に、政府・都府県からの「緊急事態宣言」が宣言され、その後もコロナウイルスの影響がますます拡大しております。経済と医療へのバランス、社会生活への影響等々、誰もが正解のわからないなかでより正しい判断・決断を求められる今、多くの人たちがそれぞれの立場で最善を尽くそうと奮迅されているところでしょう。

元の状態には戻らない?

社会や市民への影響、また経済へのダメージなどを考える時、「東日本大震災」「リーマンショック」などの過去の大きな出来事から、よりよい対処法をひねり出そうとしている方も多く見受けられます。過去の歴史から学ぶことは多々あります。そして必ずそこにはヒントになるものが隠されているのだと思います。

ただ一方で、今までとはまた違う未来志向的な考え方も求められているのではないかと感じています。普段の毎日は、どうしても目先のことに追われがちになってしまいます。日々の暮らし、数日先の生活に不安を持たない人は、ほとんどいないでしょう。いわゆる現在の生活に対しての対処療法です。
具体的な例を挙げるとすれば、会社に出社しての勤務が難しければテレワーク、一か所に集合しての研修が無理であればWEBを活用しての研修などでしょう。これらは、各社各自が必要に迫られて取り組み始めているものですね。

ここで素朴な疑問が浮かびます。では、コロナウイルスが落ち着いたら、社会全体が元の暮らしや状態に戻るのでしょうか。みなさんはどうお考えですか?
わたしは元には戻らないと思っています。例えばテレワーク。実際に取り組んでいる企業からは「特段、生産性が落ちない」「やってやれないことはない」という言葉をよく耳にします。そうなのです。これまでテレワークを導入してこなかっただけで、必要に迫られたら案外問題なくできるものでした。人間はどうしてもやらなくてはいけない状況となれば、それが有効になるように知恵を絞って可能にしてしまうのですね。
そして一度実践してその良さがわかれば、そのまま継続はしないまでも、知らなかった以前のように戻ろうとはしないのではないでしょうか。つまり、コロナウイルスの影響が出る前の社会には戻らず、新しい世の中の仕組みや、これからの考え方が定着していくきっかけになっていくことも少なからずあると思っています。

鳥の目、虫の目、魚の目

そう考えていくと、日々の生活に追われてそれをなんとか乗り切ることだけを考える「対処療法」では不十分。だとすれば現時点での問題だけではなく、1か月後、半年後、1年後と先を見据えながら、この先何がより良い方法なのか、変わることを恐れずに進んで行くことが求められているのではないでしょうか。言い方を変えれば、この機会をピンチと見るのではなく、チャンスと捉えられるかどうかではないかと思います。

ではどのように考えれば目先の不安に左右されずに今と未来を適切に捉えて行動に移せるのでしょうか。

「鳥の目、虫の目、魚の目」という言葉をみなさまはご存じでしょうか。
まずは「鳥の目」。
仕事でも勉強でも、いきなり細かいところから着手するのは、賢い方法ではないでしょう。
自分の現在地がわかっていないのに、動き始めても効果的ではありません。それに頭の整理がしにくくなり、大きなストレスの原因になりかねません。
「鳥の目」とはいわゆる俯瞰するということのようです。
「高いところから全体像を把握する」という意味です。鳥になり、高い位置から下を見て、全体像を把握してみましょう。難しく思えることも、全体の大まかな成り立ちや仕組みがわかると、捉え方がまた違って見えるでしょう。
現在のコロナ問題で考えて見ると、会社の置かれている立場、社会全体ではどのような変化があるか、日本・世界の動きはどうかなど、それらをしっかり捉え、これら全体を踏まえて方向性や目標、手立てを講じていくことが重要になります。

次に「虫の目」です。
当たり前ですが、虫は小さい生き物です。小さな彼らは、地に面した低い位置にいるからこそ、上からは見えなかったことが見えてくるようになります。ターゲットを絞れば、虫のように「狭く深く」を心がけ、徹底します。いわゆるディテールの捉え方と言えるでしょう。
今で言うと、会社やプライベートにおけるご自身の立場や動き方、周りの人に具体的にどんなことが想定されるのかを捉えるのです。

最後に「魚の目」です。
魚は、目には見えない川の流れを体全体で感じ取っています。魚たちがどこにいてどの方向へ流れていくのかを読み取ります。仕事にしても勉強にしても流れがあります。「風を読む」 と言ってもよいと思います。
社会全体が今後どのような流れを見せるのか、その流れの中で何が起きていくのかを捉えましょう。

今こそ未来志向で

いっこうに収束の気配を見せないこのコロナウイルスが猛威を振るう中でこそ、鳥の目・虫の目・魚の目で社会を適切に捉え、未来に目を向け、むしろこれをチャンスと捉えて新たなものを生み出す、そんな気概をもって行動する人たちが次の時代を切り開いていけるのではないでしょうか。

株式会社エルシーアール 管理部 課長 福田 典子