【コラム】海外勤務で思うこと③

3.海外事業のメリットとリスク


日本の総人口は、2050年には約25%減少し1億人を割り込み、高齢化率は約20%から約40%に上昇すると総務省が発表しています。これからの日本は、人口減少と少子高齢化が進んで行くことになります。

長年の海外駐在で感じたこと、現地での仕事、生活で感じたこと、日本との違いについて、6回にわたり書いていきます。第3回目は海外事業のメリットとリスクについてです。

海外では日本と異なり、大きな市場が在ったり、豊富な労働人口が有ったり、広い土地が在り、生産コストが低く出来るなど、有利な事業環境があります。

アメリカでは大きな市場と、強い購買力で、商品がよく売れます。大量消費社会でどんどん買ってどんどん捨てるというライフスタイルです。
但し、人件費が高く、アメリカの製造業は、人件費の安いメキシコに、生産地を移転する企業が多く出てました。自由貿易圏で、陸上輸送が可能で、人件費がアメリカの5分の1である、メキシコに生産移転していました。取引先の部品メーカーもアメリカ生産を終了しメキシコからの供給に切り替えていました。しかしながら、トランプ政権の誕生とともに大きく情勢が変わり、乗用車とトラックの国内生産を奨励、メキシコ進出を行った企業は大きな損失を被ったのです。海外進出は大きなメリットと共に政策や情勢の影響を受けるリスクを伴います。

インドネシアでは平均年齢が29歳、人口ボーナスは今後10年以上続く見込みです。1人あたりの名目GDPが日本の10分の1と、安い賃金と豊富な労働力が魅力です。毎年7%を超える経済成長率と、拡大する経済、豊富な天然資源と、広い国土に恵まれ、人口も世界4位の2億7千万人、将来性の有望な国なのです。
しかしながら、汚職の蔓延や、政策の不安定さ、法令運用の不透明さなどのリスクもあります。道路、港湾、鉄道、電力などのインフラ整備が、経済発展に追い付いていないために物流が滞ったり、激しい交通渋滞や停電が発生していました。
治安の悪さもリスクになります。1998年に、アジア通貨危機をきっかけに、ジャカルタで大暴動が発生し、ショッピングセンターが放火・略奪され、多くの中国系インドネシア人が犠牲となりました。駐在中も、2回イスラム過激派による爆弾テロがジャカルタでありました。
労働組合による過激な活動も頻発し、賃上げ要求によるデモで、道路の封鎖や、工場敷地内への侵入、破壊活動などもありました。

インドネシアで実走テストを行い、1年以上経った時です。“許可された区域外で走っていなかったことを証明できなければ罰金を払え”と、警察から通告があったのです。その罰金が巨額なのです。1年以上前の証明など出来る訳も無く、法の解釈を利用した、行政からの不当な請求でした。結果は、現地パートナーから政府に働きかけてもらい、通告が取り消されました。このように法令の運用が不透明であったり、不公正さが、リスクとなることがあるのです。

しかしながら、日本の将来は人口減少と高齢化が進み、国内市場は縮小していきます。安全で無難な日本よりも、リスクはあるものの、市場規模の拡大が見込まれる国での事業展開が重要ではないでしょうか。日本人の専門知識や技術力は、途上国ではまだまだ必要とされています。海外で事業活動を行うことで、雇用を創出し、利益を生み、得られた利益を現地に再投下することで、現地の経済発展に貢献していくことが出来ます。現地の社会生活を向上させ、人々の幸せに貢献し、企業としても発展継続していくことが可能になるのです(つづく)


株式会社エルシーアール コンサルタント 秋間 和洋

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