2.海外での仕事の進め方
日本の2023年の名目GDPが、ドル換算でドイツに抜かれて4位に転落しました。日本の一人当たり名目GDPは37位になりました。長年にわたる低成長、円安が影響したとのことです。(内閣府発表)
日本では「仕事にやりがいを感じ、熱意を持って働いている」社員の割合はわずか5%、調査した145カ国中、イタリアと並んで最低とのことです。職場に閉塞感を抱いていることが一因とのことでした。(米ギャラップ社調査結果)
長年の海外駐在で感じたこと、現地での仕事、生活で感じたこと、日本との違いについて、6回にわたり書いていきます。第2回目は海外での仕事の進め方についてです。
海外では仕事の目的、意味と効率を重視します。日本的な細部までのこだわり、完璧を求める進め方は、海外では時間の浪費と考えています。より少ない労力で、成果を出すことが効率的だと考えるからです。品質よりも効率が重視されるのです。明確な仕事の意味と目的も重要です。
自動車開発の現場では、不具合を出さないために、設計段階で細部にわたり仕様の検証を行わなくてはなりません。アメリカ人は、この様な日本的なやり方は、非効率的だと考えているようでした。
アメリカの生産現場では、作業を省くために、作業標準を守らないことがあります。それによって、不具合が発生したことがありました。対策として、設計仕様の作業ミスによる不具合の対応をしました。日本では当たり前の作業も、海外では行われないことがあるのです。
日本では周りの人々との調和を重んじ、良好な関係を保つことが重視されます。
自分の考えや意見があっても、周りに合わせることを優先しがちです。日本人は周りと異なる意見や考えに対して、批判や非難が優先され、肯定的に理解される機会が少ないのです。
アメリカでは多様性、個人を重視する文化があります。子供の頃から、自分の意見を積極的に発する訓練も受けています。自分自身の信念に基づいた行動をし、たとえ大多数の人と自分の意見が異なっていても臆せず行動します。その代わり、他人の異なる行動や主張も尊重するのです。
新しい機種の量産開始5日前でした。正規外のテストで、アメリカ人担当者が不具合を見つけました。設計変更を行う場合、量産開始を遅らせることになり、影響が甚大です。軽微な不具合であれば、次モデルで対応するところです。
アメリカ人担当者は、躊躇なく不具合を主張しました。結果として、設計変更を行い、量産開始も遅れなく行われました。暫定金型を製作し、週末に生産し、日曜日に工場に納入、月曜日の量産に間に合わせたのです。その時活躍したのもアメリカ人のマネージャーでした。
アメリカ人の仕事に対する姿勢や効率の良さ、自己主張能力など、学ぶべきことも多くあります。
日本独特の横並び主義、周りの空気を読む、忖度をするなど、不明瞭な意思決定が、現在の閉塞感を作り上げているのではないでしょうか。異なる意見を安心して言える環境や、新しい発想を肯定的に捉える気持が、新たな価値を創り出すことになるのです。
自らが主体的に考え、社会に対して良い変化をもたらすものだと、信念を持って行動することで、最大限の能力を発揮することが出来るのです。
仕事の「意味」を考え、本質的に大切なことに注力し、過剰な完璧主義から、多少のミスを許容し合える寛容な環境が、良い人間関係を創り、生産性をも高めることになるのです。
日本の良いところは残し、海外の良いところは柔軟に取り入れて行くことで、より物的・精神的な豊かさが得られるのではないでしょうか。(つづく)
株式会社エルシーアール コンサルタント 秋間 和洋
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