【コラム】海外勤務で思うこと④

4.異文化理解の必要性


ロシアのウクライナ侵攻、中東でもイスラエルとハマスの間で大規模な紛争が勃発、周辺地域を始め、国際社会を不安定にさせています。世界経済の先行きは依然として予断を許さない状況です。食料やエネルギー価格上昇など日本経済への影響も懸念されています。対立や紛争は民族間の文化の違いが大きく異なった国々の間で起こりやすく、多様な文化や価値観が相互に理解され尊重されることで紛争防止につながるのではないでしょうか。

長年の海外駐在で感じたこと、現地での仕事、生活で感じたこと、日本との違いについて、6回にわたり書いていきます。第4回目は異文化理解の必要性についてです。
 

海外で仕事を行うのに大切なことは異文化理解です。語学力があってもコミュニケーションが取れないことがあります。一番大切なことは相手を理解しようとする姿勢です。


アメリカ駐在の5年間、特に最初の3年間は苦労しました。言葉の違いも一つの原因でしたが、考え方、習慣なども違い戸惑いました。アメリカ人の多くは指示に素直に従わないように思います。仕事の指示をしても“なぜやらなければならないのか”と質問を受けます。日本では上司からの指示があれば、まずはやるのが当然ですが、海外では業務指示には、明確な意味と目的が必要なのです。本人を納得させないと、なかなか指示通りに働いてくれません。 

問題点を指摘したときには、自分の非をなかなか認めません、言い訳ばかり言います。自分以外のところに原因があったと主張しているように感じます。それは理由を説明しようとしているのです。移民であり、開拓者であるアメリカ人のメンタリティーとしては、過去の問題は水に流して、将来を見据えた挑戦を重視します。とても前向きで楽観的な姿勢でもあります。

アメリカで学校教育を受けた息子は“I am always right.”と言っていました。先生にそう言われているとのことです。日本では、出来ない科目を出来るようにするが、アメリカでは、出来る科目を伸ばす教育を受けていたそうです。結果、前向きで、自己肯定感を高める、極めてポジティブな教育となっていたのです。

日本人の感覚では分からないことも、歴史的背景や社会的背景、教育の違いなどが分かれば理解することが出来るのです。違いを理解し受け入れる柔軟性が国際社会では必要なのです。アメリカでの経験が日本に帰ってからも役立ちました。

日本に帰任した直後に、イタリアの会社との共同開発プロジェクトの推進を任されました。言葉も習慣も違うなか、開発した車は、タイで生産、販売され、好評を得ました。イタリア人ともタイ人とも良好な人間関係を作ることが出来ました。

世界的な競争が進むグローバル社会では、国際感覚が必要です。日本人としてのアイデンティティを持ちながら、広い視野と、異なる言語、文化、価値観を理解し、自分の考えを分かり易く伝える事が出来ることが必要なのです。相手の立場に立って、お互いに理解し、新に価値を創り出すことが大切なのです。日本の良さも伝えながら、外国の文化や価値観など良いところを取り入れていく人材が必要なのです。異文化を理解することで、世界が広がり、人間関係も豊かになり、精神的な豊さを感じることができるのです。


日本は人口減少と高齢化が進み、国内市場は縮小しています。世界に目を向ければ、市場も拡大し経済発展も続く地域が沢山あります。その様な地域で異文化を理解して日本人として貢献することで、日本人に対する信頼感を高め、結果的に日本の物質的、精神的豊さを発展継続していくことが出来るのではないでしょうか。

(つづく)


株式会社エルシーアール コンサルタント 秋間 和洋

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