ISO39001 導入事例 運送業 栃木県

ISO39001導入前の現状

11年前にISO9001を認証取得している運送業者のM社。保有車両台数は180台と県内でも大規模の部類に入る運送事業者である。

10年以上、品質に取り組んできた成果もあり、誤配送は大幅に減少し、ドライバーがお客様に対応する接客態度でも、一定の評価を頂けるまでに改善してきていた。しかしこの2~3年は、軽微な交通事故が頻発するようになっていた。

原因は様々考えられるが、ヒューマンエラーともいえる「うっかりミス、意識の分散」などが多いように思われ、何か対策を講じなければならないと社長は感じるようになっていた。そのような状況を踏まえ、ISO39001(以下RTSMS)の導入が会社の経営幹部会にて決定したのである。

特徴あるコンサルティングの進め方

RTSMSの認証取得プロジェクトがいよいよスタートした。まずは現状調査である。ドライバーたちの意識調査、リスク管理能力のヒアリングなど、リアルな状況をコンサルタントが膚で感じて、M社に合致した内容のシステムを導入しようという方針になった。

しかし立派なシステムをつくることは避け、できるだけ平易な表現とスリムな文書体系で、社員の皆が読んで・見て分かる内容にしようということを第一条件に進めることを皆で共有化した。

コンサルタントが特に意識した点は、現場のドライバーたちが関与することになる記録類を最小限に抑えることだった。少し大げさに言えば、現場のドライバーたちが現在使用している記録類を基準にして、それ以外の新たな記録類は、極力導入しないという方針で進めることにした。

分かりずらいISOの規格書は一読するだけにして、規格の解説にメインで使用する口語訳テキストという規格書を平易な言葉でまとめたオリジナル資料を活用して進めていった。その結果、プロジェクトメンバーは、ISOの規格にも慣れ、理解度も深くなり「つまり現場でいうと〇〇をやればいいんだね!」と規格の目的に合致した解釈ができるレベルまでになっていた。

システム導入後の変化とメリット

順調にプロジェクトが進み、RTSMSが完成し、いよいよ運用開始の時期となった。導入後、すぐに効果が出たものが、「ヒヤリハット」の推進による事故発生の低減である。これまで軽微な事故や車両の破損なども含めると、毎月5~6件程度発生したものが、導入半年で月平均0.5件にまで低減できることとなったのである。

こうなるとドライバーたちも事故の発生が低減したことにより、彼らの表情も徐々に明るくなって、社内の雰囲気がとても良くなってきたのである。そして社内の雰囲気が良くなると、ドライバーたちのリスク管理に対する意識も高まり、好循環の組織風土となっていったのである。また金銭面で言えば、事故発生の大幅低減により、損害保険の使用頻度が小さくなり、保険料の支払額も大幅に低減することが実現できた。

社員たちに効果があった点はもう一点ある。事故率低減による社会的信用の向上である。社員たちも誇りと責任をもって運転に従事することができるようになった。

今後の展望

今後のM社のビジョンであるが、「地域に安心感と信頼感を与えられる運輸会社を目指す!」との方針を掲げることにした。いつもきれいなボディ、いつもきれいな運転、いつもきれいな心で仕事。このような心情で社員たちが誇りをもって自社の業務に従事してもらえることが、社長にとっても大きな喜びとなる。

まさにRTSMSの効果的な運用を目的とした導入事例の内容である。

                  株式会社エルシーアール 代表取締役 荒井 浩通