“しょうゆとソースを取り違えない”ヒューマンエラー研修実施事例 栃木県県西部 食品製造業

 

 

 

 

 

 

誰でも起こすヒューマンエラー

ある日、あなたが食堂でごはんを食べたときに、似た形をした醤油とソースの瓶を取り違えておかずにかけてしまいました。「う、まずい!」で笑ってすませる程度のエラーです。が、この「取り違え」、病院での薬品の取り違えだったらどうでしょう。場合によっては生命にかかわる大事故につながるリスクがあります。でも“この取り違い”の行為そのものにほとんど差はありません。

日々の私たちの生活や生産活動のなかでは、いつでもどこでも誰にでも起こりうる「ヒューマンエラー」の一つと考えねばならないでしょう。ヒューマンエラーは思わぬ事故を招き、企業の生産性にも大きなダメージを与えることにつながる厄介なコトなのです。

 

食品製造会社で研修を実施

エルシーアールでは、「ヒューマンエラーとは何か」「ヒューマンエラーの原因は何か」「ヒューマンエラーを起こさないようにするには」をテーマとした研修を食品製造業で行いました。

この会社では50代、60代のパート従業員さんが数多く働いていて、材料の取違い、機械ボタンの押し間違い、足をつまずいての転倒など加齢が原因と思われるミスが稀におこるのだそうです。でもこれらを「あのひとだから仕方ない」と個人の問題にしてよいのでしょうか。
ヒューマンエラーの類型と原因を把握し、しかるべき対策をとれば、完全ではないとしてもかなりのエラー(もしくはエラーによる悪影響)を減らすことはできるといえます。

ヒューマンエラーの分類

ここではヒューマンエラーを6つに分類します
①本人の能力的にできないこと (例:視力が悪くて識別できない、音が聞こえない)
②意図しないエラー(例:“思い込みで間違った”“ついさっきのことを忘れた”)
③知識不足、力量不足(例:知らなきゃ出来ない、スキルがなきゃ出来ない)
④違反(例:ルールを知らない、教わっていない、忙しくて手を抜いた)
⑤チームの意思不疎通(例:人間関係が悪く、情報共有されていない)
⑥組織の不適切な行為(例:過度な利益重視体質による不適切行為)

ではこれらエラーを起こす原因にはどのようなことがあるのでしょう。個人の問題だけではないことがわかります。

ヒューマンエラー防止策

防止策はSHELモデルを意識して“環境を変えてあげる”ことが基本的な考え方といえます。例えば本人の加齢という変化に対し、環境を明るくする、位置や高さを変えるなどが挙がります。

企業が実際に取り組むヒューマンエラー防止策には以下のような様々な方法があります。
・“意味のある”マニュアル(作っただけでは機能しない)
・フェールセーフ設計(ミスしても安全な方向に動くよう設計する。例:転倒すると電源がOFFになる電気ストーブ)
・フールプルーフ設計(ミスができない設計 例:扉をしめないと加熱しない電子レンジ)
・ヒヤリハット活動による情報共有
・モノの置き方、動き方を定める

コミュニケーションも防止策

先に挙げた防止策は物理的(モノ)な防止策です。これらと同等に重要な防止策は、組織におけるコミュニケーションなのです。コミュニケーションによる情報共有がうまくできていれば、例えば指示した側と受け取り側の齟齬は減るでしょう。またそのベースには組織内での人間関係も深く関係してきます。報連相が多い職場にトラブルが少ない傾向があることと関係があります。

 

自社でのトラブル分析

研修ではその会社で実際に起きたヒューマンエラーに起因するトラブルを挙げ、分類と原因を掘り下げ、今後の対策立案まで行いました。参加者からは「すぐにできる対策は実施する」「作業マニュアルの意味を再周知する」などの意見が寄せられました。

エルシーアールではヒューマンエラー研修以外にも、生産性向上のための研修やコンサルティングを行っています。困りごとなどがありましたら、ご相談ください。

出典:小松原明哲.ヒューマンエラー第3版.丸善出版.令和元年

 

              株式会社エルシーアール 事業推進部 取締役部長 若色 宏幸