【コラム】わたしの考えるおもてなし(社内からお客様へ) 第2回

 

 

 

 

 

 

第2回 ~「しつらい」…小さなことこそ、心を込めて大切に、真剣に~

今回も心に残る、人のぬくもりを感じるおもてなしについて、第2回目は、「しつらい」の大切さについて、実は、感動は、小さな、細部に宿るのではないか、ということを少しお話させて頂ければと思います。

『しつらい』:見えないけれど、相手に確実に伝わるのが心

私が客として店舗を利用する際にも感動する場面は、人さまざまな観点があるとは思いますが、やはり、その裏に、きっとこの方が、少し前に気づいて考えて対応してくれていたのだなと感じた時には、心が動き、喜びが生まれると感じます。
特に、そのお店に入った瞬間に感じた雰囲気や第一印象は、その後もその「人」のぬくもりの余韻を感じながら快適に過ごせることが多いと感じます。
感動につながるサービスにおいても「おもてなし」の配慮や気配りはもちろんのこと、事前の準備と空間の演出する「しつらい」は、大切な要素と感じます。そして、いらっしゃる相手を思い浮かべながら歓迎の心を表現すること、空間を整える事前準備は、お客様へ対応する心の余裕、心を整えることにもつながります。お客様のタイミングに合わせて、スマートに対応するためにも、「しつらい」は、一見地味で、小さなことかもしれませんが、そこに「丁寧さ」「真剣さ」があるかどうか、見えないけれど、確実に伝わるということだと思います。

利休七則 茶道から学ぶ「しつらい」

「利休七則」は千利休が遺し、簡素簡略の境地であるわび茶の基本の心構えである「おもてなし」についてまとめ、記した七つの心得です。私自身が学生時代から茶道を学ぶ中で、まさに、「しつらい」からおもてなしは始まっているのだなと感じました。もう二度と会えないかもしれない、一生に一度の出会いと思い、誠実に尽くす心構えである「一期一会」の精神から繋がってくることもあるかもしれません。ビジネスにおいても顧客視点のサービス提供を学ぶ上で、沢山のヒントが詰まっている心得と感じます。
自分の好きなことをするのではなく、相手目線にたって、喜んでいただくために、どの様に準備し、先を想定して動くことが必要かということです。
 『利休七則』
1.茶は服のよきように点て
(自分の理想や想い以上に、相手の気持ち、状況を考えること)
2.炭は湯の沸くように置き
(湯が丁度良く沸くように最初の要となるツボをおさえた事前準備、段取りが大切)
3.花は野にあるように
(ものの表現や課題は、本質を知り、余計なことを省き、シンプルを意識する)
4.夏は涼しく冬暖かに
(打ち水や菓子等で相手の体感温度を変化し、五感を使い工夫し、心地よく、快適に)
5.刻限は早めに
(時間的に先をみて余裕をもつことで、精神的なゆとりが生まれ、焦りを防止できる)
6.降らずとも傘の用意
(他者に対する思いやり。不測の事態に備え、チームで解決し、客に心配をさせないこと)
7.相客に心せよ
(その場にいるすべての人を尊重し、真心をこめて、より良い場にすること)
想像力を豊かに、相手を思い、行う準備や空間づくりを、いかに、自分が楽しみながら工夫し行えるか、まさに、おもてなし力を磨くことは、よりよいこれからの働き方へも繋がっていくようにも感じます。

小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に

CA時代も上司や先輩からは、同じように、お客様のタイミングに合わせてサービスを行うために、事前準備や段取りの大切さ、現場のフライトの質を向上させるために、伝授された合言葉、「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」がありました。
また、その事前準備や段取りを細やかに行うためにフライト前後には、地上係員、機長、整備士、CA間で必ずブリーフィングを行い、細やかな点まで気づいたら確認し合う時間をとっていました。そこで得た情報を基に、サービスを客層にあわせてコーディネートを行い、飲物1つをとっても、真剣に種類を決め、提供するタイミングもみながら対応していました。ありふれたお飲物でも、いかに、相手にとって特別なオレンジジュースであり、ホットコーヒーであるか、そう思っていただけるように真心を込めて準備し、欲しい時にお渡しできることが大切と教えられました。その心で対応したら多くのお客様から「おいしいわ」「丁度、飲みたかったのよ」と喜んでいける機会が増えたことを覚えています。お客様が搭乗されて、お弁当持込の方へ注文される前に、すぐにお茶やスープがお渡しでき喜んで頂けたこと。乳児が多い便で泣き始めたらすぐにミルク用の白湯がお渡しできたこと、事前に想定し細かな点まで準備していたことで、お待たせせず、心を込めて対応して差し上げることの重要性、その喜んでいただく笑顔にどれだけ、自身も仕事のやりがい、喜びを感じさせていただいただろうかということに気がつきました。
研修の現場で拝見していても、社内からもお客様からも慕われ、輝いている方は、何か大きなことや特別なことを担当しているからということではなく、小さなことでも、日頃から丁寧に、決して、嫌な顔をしたり、馬鹿にしたりせず、自ら楽しみ、日々、新鮮に積み重ねて出来る方は、いつも人や信頼が集まり、更に輝きを増しているようにも感じます(つづく)

株式会社エルシーアール 人づくり講師 篠原 優子

 

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