【コラム】想定外と不祥事は、なぜ繰り返されるか 第2回

 

 

 

 

 

 

 

第2回 ~心理と原理原則~

想定とは人が考える領域であるため、大事故における想定外発言の背景には、リスクを過小に評価したり責任を回避する傾向がみられることを、前回お話しました。今回は、想定外を引き起こす要因についてフォーカスします。

2011年にマッド・デイモンが出演した映画「コンテイジョン(接触感染)」は米国疾病予防管理センターやウィルスのアールノートを知る良い機会となりましたが、ほぼ同じ時期に畑村洋太郎先生(東京大学名誉教授)に失敗学の指導を受けました。

想定外を引き起こす要因の一つ目:「人間の心理」

有り得ないと思う事故や災害が起きた「現場」へ足を運んで、「現物」を見て、「現認」を行ってきた畑村先生の持論は「有り得ることは、必ず起きる」ということです。

人には「見たくないと思うモノは見えなくなる」

   「考えたくないと思うコトは考えなくなる」という心理があります。

そのため、「発生頻度が低いものは起こらない」という心理が働き、想定の境界ラインを引下げてしまうので、結果的に「想定外」が起き易くなります。

「想定外」は起こり得ないのではなく、確率は低いかもしれないが起こるということです。重要なのは、それを認識して安全側で対策を講じられるかどうかです。

例えば、津波が原発の防潮堤を超える確率は極めて低いとして対策をクローズするのではなく、津波が防潮堤を超えた場合の安全対策を講じ、最悪の事態を防ぐということです。

想定外を引き起こす要因の二つ目:「原理原則」

原理原則を理解していなければ「想定外」は起き易くなります。

ウィルスの専門家によると、アールノートRとはウィルスの基本再生産数のことで、Rが1より小さければ感染は縮小しますが、1より大きければ感染が拡大します。

新型コロナウィルスの値はよく分かっていませんが、インフルエンザウィルスの値(R=1~2)より大きいと推定されます。

は3つの要因から算出されます(①×②×③)

①接触1回での感染確率、②時間当りの接触回数、③感染力を保持する時間

新型コロナウィルスの感染拡大防止として「人との接触削減」の意味は、要因の①と③は未だコントロールが困難につき、要因②の接触回数を下げることと理解できます。

それらの要因について、ウィルスの感染力、人の免疫力、検査隔離、人口密度、衛生管理,生活様式など、その時々の状況変化を考慮して算出したのが実効再生産数Rです。

このRが1.5ならば感染者10人から15人,15人から23人と1.5倍づつ、Rが2にならば感染者10人から20人,20人から40人と倍々で感染が拡大していることを意味します。

基本的に、「実効再生産数Rを1より小さくしなければ、感染拡大は止まらない」

     「Rが大きいほど感染拡大のペースが速く、感染防止に時間がかかる」

 この原理原則を理解していなければ、正しい判断と理にかなった行動が出来ず、結果的に「想定外」は起き易くなります。

特にトップリーダーは、想定外を引き起こす要因を認識して、リスクやチャンスに対して正しく判断し、理にかなった行動をとることが求められます。

トップリーダーに求められる行動は「要請」や「呼びかけ」だけではないということです。

次回は、災害に着目して事業継続計画BCPの経験をもとにお話したいと思います。

(9月15日配信号につづく)

株式会社エルシーアール コンサルタント 嶋脇 寛

 

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