【コラム】想定外と不祥事は、なぜ繰り返されるか 第3回

 

 

 

 

 

 

 

第3回 ~情報の伝達と忘却~

 

前回はウィルスの感染理論を例に、原理原則を理解していなければ正しい判断と行動が難しいことをお伝えしました。

今回は台風シーズンを前に、災害の事例をもとに情報の伝達と忘却についてお話します。

 

情報の伝達

情報の伝達がうまくいかないと、危険を回避する行動がとれず、想定外の事態に至ることがあります。

2011年の東日本大震災における津波災害は、情報網が発達した時代において、ハザード情報がうまく伝達されなかった大きな失敗例です。

国土交通省が行っているBCPプログラム「事業継続力認定」に携わっておりますが、各地域の災害は各自治体が作成したハザード情報をもとに想定しています。

<ハザードマップ>

以下の2つの実例は、ある自治体のハザードマップに記載されている想定です。

実例A:改訂前「72時間総雨量300mmを想定」

    ⇒ 改訂後「72時間総雨量778mmを想定」

良い理由:想定雨量が明確なので、実際に報道される雨量と比較して判断できる。

 

実例B:改訂前「百年に一度の最大雨量を想定」

     ⇒ 改訂後「千年に一度の最大雨量を想定」

悪い理由:想定雨量が不明で、実際に報道される雨量と比較して判断できない。

千年に一度という想定は、非現実的な情報だと住民から誤解される。

防災の専門家によると、その自治体のハザード情報を見れば、首長の防災に取り組む姿勢が分かるといいます。

ハザード情報は、住民に「的確な情報」を「分かり易く」伝えなければ役に立ちません。

洪水被害が激しさを増している中、洪水ハザードマップが各自治体で更新されているのは良いことです。

しかしながら、想定の仕方が具体的でなく住民に伝わらない等、課題は多いと考えます。

 

情報の忘却

情報が忘れ去られることにより、経験済みの事象が未経験の事象となり、想定外の事態に至ることがあります。

三陸津波の歴史を見ると繰り返し大きな被害を出しています。その理由の一つは、過去の津波の記憶が消え、津波が未経験の災害となっていたからです。

<三陸津波の歴史>

・1896年、明治三陸地震津波(死者・不明者2万人)

・約40年後の1933年、昭和三陸地震津波(死者・不明者 3千人)

・更に80年後の2011年、東北地方太平洋沖地震津波(死者・不明者2万人)

かつて指導を受けた畑村洋太郎先生(東京大学名誉教授)は、災害や事故の記憶には次の法則性があると言います。

「3年で個人が忘れ、30年で組織全員が忘れ、60年で地域から忘れ去られる。」

多数の犠牲者を出した2011年の津波は、昭和津波から約80年の時を経て、過去の津波の記憶は地域から消えていました。

津波の恐ろしさは繰り返し発生し、その周期が記憶に残らないほど長いということです。

災害の情報は記憶だけでなく記録に残し、伝承する仕組みをつくることが重要です。

次回は、事故や事件に着目してリスク管理の視点からお話したいと思います。

(つづく)

株式会社エルシーアール コンサルタント 嶋脇 寛

 

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